No.05 言霊連盟

【成績】
OA率:14/17 平均:416.06KB 最高:533KB 最低:233KB  ランク:S
【備考】
青バト初のオーバー500、4回のファイナル出場
出場回出場順KB勝敗順位 ネタの種類/タイトル
7回(コント)1番5091位 コント/一芝居
14回(二本松)5番4492位 漫才/ホームドラマ
16回1番4732位 漫才/卒業式
1回C7番630-8位 ショートコント/観覧車とか
40回(近江)4番3694位 漫才/理想の告白
63回2番2335位 漫才/フランス
65回1番3931位 漫才/かぐや姫
81回(リベンジ)4番3012位 漫才/理想の告白
89回3番3893位 コント/病院で怪談
3回CB10番746-8位 漫才/芸人になったら
122回1番3892位 漫才/コンパ
123回(管理人)6番4413位 コント/「みんなでうたおう」の打ち合わせ
128回6番5331位 漫才/誘拐
4回CB3番778-5位 漫才/街中で再会
4回CF7番730-10位 漫才/フランス
188回(三好)5番4254位 コント/ファミレス
196回3番4013位 漫才/目撃者になりたい
248回1番4531位 コント/殉職
249回(橿原)6番4692位 コント/姉妹都市交流会
252回(ベテラン)2番4372位 漫才/音楽プロデューサー
260回(10組)8番4093位 コント/象徴
7回CA8番846-4位 コント/ハイジャック
7回CF1番562-12位 コント/恋愛相談
8回BC8番361進出3位 コント/ファミレス
8回CB3番774-3位 コント/仏壇(客演付き)
8回CF10番778-5位 コント/楽しい娯楽(いいタイトルが浮かばなかったからこれで)
紹介
ボケ:栃城
ツッコミ:槍沢

エントリーNo.05は青バト草創期から活躍を続ける大ベテラン。
勝率、平均KB、C大会出場数。どこを切り取っても好成績を残している。
しかし戦いぶりはかなり波が激しく栄枯盛衰のメリハリがはっきり。
酸いも甘いも知る青バトの生き字引だ。
また、オフエアとなった3本のネタもすべて再挑戦しオンエアされるなどネタの倹約が上手いコンビ。
これまでに計3回引退宣言を発しているが、なんだかんだで最後まで出場し続け、
最後のC大会では自身最高となる第5位に入った。
漫才・コントをバランスよくこなす自在性に注目して5本のネタをどうぞ。



第7回 509KB(1位)
コント/一芝居
実はこのネタ読んだことないんでこの後読みます。

槍沢:部長。川神商事との接待ですが先方からの希望で来週の金曜に決まりました。
はい、じゃあ私は昼休みに行ってきます。……はあ、ようやく仕事が一段落着いたよ。
栃城:あの……。槍沢さん。ちょっといいですか?
槍沢:ああ、栃城どうしたんだ?
栃城:実はちょっと頼みたいことがありまして……。
槍沢:なんだよ、急に改まって。
栃城:実はですね、今度田舎からオフクロが一泊二日の予定で上京して、僕の生活や会社での仕事ぶりを見に来るって言うんですよ。
槍沢:ふんふん。
栃城:で、僕毎月オフクロに手紙書いているんですけれど、そこでちょっと自分のことを大きく書きすぎていまして……。
槍沢:あーわかった。それでオフクロさんに送ってある手紙どおりに一芝居打って、騙してくれっていうわけだな。
栃城:そうです。そうです。オフクロを安心させてやりたいんですよ。
槍沢:なんか、純朴青年のコメディドラマみたいな話だな。……そういうことなら手伝ってやってもいいけどさ。
栃城:ありがとうございます!!
槍沢:で、お前自分のこと大きく書いてあるって言ってたけどなんて書いてるんだ?
   同期の出世頭? それともエリート社員とか? まさか社長候補なんて書いてないよな。はっはっは。
栃城:若者のカリスマ。
槍沢:は?
栃城:ですから、手紙には若者のカリスマと書いています。
槍沢:えーと……。お前が?
栃城:はい。
槍沢:どういうつもりだよ!
栃城:つい、大きく書いちゃって……。
槍沢:限度があるよ!! なんだよ若者のカリスマって! 会社でのポジションじゃねえの!?
栃城:あと、一部の人たちからは教祖と呼ばれているとも書いています。
槍沢:教祖!
栃城:ええ、皆から崇め奉られ、僕の話を聴けば心が清らかになると言っています。
槍沢:本当の教祖じゃん! なんだよ心が清らかにって。普段キャバクラの話しかしないじゃん。
栃城:それから、霊力が高まる石を25万で売ってる事になってます。
槍沢:しかもインチキ宗教かよ! さすがにオフクロさんも信じてないと思うぞ。
栃城:いえ、それ書いた次の月石を送ってくれって言って25万届けてきたんですよ。
槍沢:信じてんのか! もう本当の事言ったほうがよくないか?
栃城:だめですよ。もし嘘を書いていたってばれたらどうなることか……。
槍沢:そうは言ってもさ。
栃城:わかりました。25万円のうち半分上げます。
槍沢:よし。手を打とう。
栃城:よかった。それで芝居の台本を作っててきたんで、ちょっと練習してもらえますか?
槍沢:わかった。(台本を受け取る)これを読めばいいんだな。
栃城:はい。朝、会社に出社してくるところから作ってあります。
槍沢:なるほど。じゃ早速練習しよう。
栃城:「栃城『やあ、みんなお早う』とさわやかに挨拶」
槍沢:「槍沢『キャ〜! 栃城さ〜んこっち向いて〜』」 うんおかしいよな。
なんで俺女子社員みたいになってるんだよ。
栃城:いや、槍沢さんは槍沢さんの役ですよ。
槍沢:だからおかしいんだろ。
栃城:とりあえず続けてください。
槍沢:わかったよ。えーと……。「槍沢『栃城さ〜んカッコイイ〜 抱いて』」 
だからおかしいよな!! 俺ホモかよ!
栃城:槍沢さんがホモでも僕がカリスマならいいんですよ。
槍沢:よくねえよ! なんのつもりで入れたんだよこのセリフ!?
栃城:男をも魅きつけてしまうカリスマ性を持っているっていうことです。
槍沢:そんな無意味なところ強調しなくていいから!!
栃城:わかりましたじゃあ書き直しますよ。(台本に書き足す)はい。これでもう1回演じてください。
槍沢:「槍沢『キャ〜! 栃城さ〜んこっち向いて〜』」一緒じゃねえかよ!
栃城:その後、ちゃんと変えてますから。
槍沢:(渋々読む)「槍沢『栃城さ〜んカッコイイ〜 抱いて。でも俺は女が好きだ! 
    女の肌の柔らかさたまらない。触った時手に残る感触が忘れられない』」セクハラだろ!
栃城:槍沢さんがセクハラしても僕が若者のカリスマなら……。
槍沢:(さえぎって)よくねえよ!!
栃城:続けますね。「栃城『ふーん』こうして、若者のカリスマの1日は終わった」
槍沢:終わり!?
栃城:だって早めに終わらせたいから。
槍沢:お前が願ってもダメだよ! お前の1日は3行で終わりか! 
栃城:もっと書かなきゃダメですかね……?
槍沢:当たり前だろ! 芝居として成立してないだろ。
そもそもお前、若者のカリスマっていうけど、どんなカリスマなのかまるで見えないし。
栃城:一応ファッションリーダーって事にしようと思っているんですけれど。
槍沢:ファッションリーダーって……。お前、普段どこで洋服買ってるんだ?
栃城:銀座のブティックです。
槍沢:略さずに言うと?
栃城:駅前ニコニコ銀座商店街のブティック笹本。
槍沢:そこではどんな洋服が売ってるの?
栃城:40代以上の主婦をターゲットにした洋服です。
槍沢:どこがファッションリーダーだ! この前飲み会で集まった時のお前の私服なんなんだよ。
   紫とピンクの地にラメが目いっぱい入ってて。毒々しいにも程があるよ!
栃城:あれ、スパンコールがワンポイントなんですよ。
槍沢:知らねえよ! あとどんなカリスマなのかって訊かれて
「ファッションリーダーって事にしたい」ってなんで曖昧なんだよ?
栃城:いや、手紙には具体的なことはなにも書かないで、ただ若者のカリスマとしか書いてなくて、
   どういったカリスマにするかもこれから考えていこうかと思ってて……。
槍沢:漠然と!
栃城:はい。後はもう25万の石だとかそんなことしか書いてなくて。
槍沢:情報なんもないじゃん。そんなんでまともな芝居なんて出来る?
栃城:それがなにも決めていないから、台本も全く思いつかないんですよ。
槍沢:だろうな。まあそれにしても3行はひどいけどな。
   もっとあるだろ、女子社員から慕われていていつも話しかけられるとかさ。
栃城:でも、先輩と僕の二人だけだと芝居にも限界がありますから。
槍沢:……どういうことだよ?
栃城:実はこのこと先輩にしか言ってないんですよ。
槍沢:なんで?
栃城:だって関係ない人巻き込むのは申し訳ない。
槍沢:巻き込まれた俺はどうなるんだよ! とにかく書き直して来い!!
栃城:わかりました……。



槍沢:よし、書き直してきたな。
栃城:はい! しっかりしたシナリオにするために取引をすっぽかしてまで書いてきました。
槍沢:そこまでしなくていいよ。頑張るのもほどほどにしとけ。
栃城:とにかくこれで完璧にオフクロを騙せます。早速練習しましょう。
   他の人のセリフは槍沢さんが代わりに演じてくださいね。
槍沢:わかった。
栃城:「栃城『おはよう』とさわやかに挨拶」
槍沢:「女子社員『キャ〜! 栃城さ〜んかっこいい〜』」ちゃんと女子社員になってるな。
栃城:「栃城、にこやかに微笑む」
槍沢:「気絶する女子社員一同(エキストラ300人使用)」多いなあ!
栃城:やっぱり、人多いほうが話も盛り上がるかと思って。
槍沢:そうは言っても300人はやりすぎだろ。どうやってかき集めるんだよ。
栃城:最悪、どうしても集まらない場合は観光地にある顔パネルで代用します。
槍沢:本当に最悪だよ! それで騙せるならお前のオフクロさんの目はどれだけ節穴なんだよ。絵だし、顔ないし。
栃城:そこはちゃんと、エキストラの人に顔を入れてもらいますから。
槍沢:どのみち300人必要じゃねえかよ! 二度手間だろ!!
栃城:そういったところはこれから直していくんでとりあえず続けてください。
槍沢:「槍沢『栃城さんおはようございます』
    女子社員A『あんたなになれなれしく口利いてるのよ!』
    女子社員B『そうよ、なんであんたが栃城さんに話しかけてるのよこのゴミ野郎!!』」
栃城:「栃城『二人とも辞めるんだ。どんなゴミ野郎にだって私に話しかける権利はあるんだし、
    私もそれを拒まない。槍沢さんこれからも挨拶を続けてくれ』」
槍沢:「女子社員A『さすが栃城さん』女子社員B『ますます好きになっちゃった』
   槍沢『こんなゴミにはもったいないお言葉(号泣する槍沢)』」俺に不満でもあるのか?
栃城:いえ、そんなことないですよ。
槍沢:なんだよゴミ野郎ってよ! おまけに『こんなゴミにはもったいないお言葉』ってなに俺も認めてんだよ! 
   否定させてくれそこは!!
栃城:まあ、おいおい変えていきますんで。とりあえず今は続けてください。
槍沢:わかったよ。えーと次のセリフね……!? あのさ。これ部長って書いてあるよね。
栃城:はいそうです。
槍沢:てことはさ。実際には部長が演じるわけだよね……。
栃城:僕の計画では演じてもらう予定です。
槍沢:……巻き込める? いくらなんでも部長は芝居に出るのOKしてくれないんじゃない?
栃城:あー……。じゃあ、最悪、朝の挨拶の後槍沢さんが部長に出世したって事で。
槍沢:ありえねえよな! なにその急激な大出世!!
栃城:大丈夫ですよ。オフクロ会社とかよくわかりませんから。
槍沢:そうは言っても、さっきまでゴミ野郎って呼ばれてたやつがいきなり部長だぞ。ありえないだろ?
栃城:大丈夫です! 仮に槍沢さんが部長役になってもゴミ野郎って呼び続けますから!!
槍沢:なんのフォローだ! むしろダメだろ。
栃城:なんだったら、芝居とは無関係にゴミ野郎って呼び続けます!!
槍沢:嬉しくねえよ! なんで俺がゴミ野郎って呼ばれたいみたいなんだよ。
栃城:いいから早く続き読んでくださいよ。
槍沢:わかったよ。「部長『キャ〜! 栃城さ〜んかっこいい〜』」なんで部長がキャ〜キャ〜言うんだよ!!
栃城:やっぱり男をも魅きつけてしまうカリスマ性は必要かなと思って。
槍沢:いらねえよそんなもん! なににこだわってんだよ
栃城:いや……でも。
槍沢:でもじゃねえよ! 社員にキャ〜キャ〜言って、これじゃバカ部長じゃねえかよ。
   こんなバカな部長のいる会社で働けるかよ!!
   ……え? 部長? いや違いますって、バカとかそんな言ってませんよ。
   私は日ごろから部長の仕事ぶりを尊敬しているんですから……。
   あ、はい。はい。はい。……ハァ〜。怒られたじゃねえかよ!!!
栃城:槍沢さん部長に不満でもあるんですか?
槍沢:お前のせいだろ!! もういい! 続けるぞ。
栃城:やる気になってくれましたか!
槍沢:やけになっただけだよ。次のセリフはと……。あのさぁなにこの展開?
栃城:ここからが重要なんですよ。
槍沢:あーそうですか。(棒読みで)「槍沢『僕みたいなゴミは死ねばいいんだー』
   ナイフを取り出して腹に刺す。グサッ。槍沢『うわー』」
栃城:「栃城『槍沢さんなにやってるんだ! 確かにあなたはゴミでクズで蛆虫だ。
   でも死んでいいなんてことはないんだ!! 待ってて今助けてる』手をかざす栃城」
槍沢:(棒読みで)「槍沢『うわあ……。見る見る傷がふさがっていくー』」……。なにこれ?
栃城:やっぱり伝説的なエピソードは必要かなと思って。
槍沢:本当に伝説じゃねえかよ!! 手をかざしたら傷が癒えるって!!
栃城:通勤の時は川を真っ二つに割って会社に通っているとも言ってあるんで、その話にも見劣りしないかと思って。
槍沢:手紙でなに言ってんだよ! モーゼじゃん。
栃城:オフクロも是非見たいって言ってるんで、槍沢さんなんとか川を真っ二つに出来ませんかね?
槍沢:無茶言うなよ!! もういい、やめだやめだ。付き合いきれるか!
栃城:え! なんでですか!?
槍沢:こんなむちゃくちゃな台本書いておいてよく言うよ。
   一連の流れまとめたら怪しい宗教の教祖ってだけだからね。
栃城:そんな、見捨てないでくださいよ……。25万あげますから。
槍沢:いらねえよ。もうオフクロさんに正直に言ったほうがいいと思うぞ。
栃城:だめですよ絶対!!
槍沢:なんで、そんなに嫌がるんだよ。
栃城:だってオフクロはいまや地元では知らぬものはいない伝説のロックシンガーなんですよ。
槍沢:お前も嘘つかれてんじゃん!
2人:どうもありがとうございました。




第65回 393KB(1位)
漫才/かぐや姫
元ランキング1位がまさかの2連敗。不調ながらも苦しみながら掴んだ4勝目。

槍沢:はいどうも言霊連盟です。青バトですから力入れていきましょうよ。
栃城:そうですよ今日は青バトですからね。もう張り切って竹取物語読み聞かせますよ。
槍沢:趣旨わかってねえだろ! お笑いの企画だっての。
栃城:じゃ分かった。百歩譲ってかぐや姫を読み聞かせることにするよ。
槍沢:譲ってないだろ! どこを妥協してのかぐや姫だよ。
   まあ、どうしてもって言うんなら読んでもいいですけど。
栃城:そうですか、では……。
   むかしむかし、あるところ。現代で言う東京都杉並区西荻窪あたりにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
槍沢:細かいな! 西荻とか出てこないでしょ、かぐや姫。
栃城:こういったほうが杉並周辺の限られた人たちにはわかりやすくなるじゃん。
   ある日のことおじいさんは山へ竹を取りにおばあさんは川へ洗濯に行きました。
槍沢:ん?
栃城:おばあさんが洗濯をしていると、川の上のほうから大きな桃がどんぶらこどんぶらこ……。
槍沢:桃太郎じゃねえかよ! かぐや姫どうした!
栃城:一方その頃竹を取っているおじいさん。
   いつものように竹を取っているおじいさんの目の前に、今まで見たこともないような大きな大きな熊が立っていました!
槍沢:熊?
栃城:おじいさんと目が合った熊はしばしの沈黙の後、おじいさんに襲いかかってきました!
   おじいさんはパニックになりながらも学生時代大きな大会で優勝したこともある柔道の経験を生かし熊を一本背負いしました!
   山から帰ってきたおじいさんは、次の日のスポーツ紙に載りました。
槍沢:なんの話だ! なんの話だこれは!
栃城:おじいさんの武勇伝。
槍沢:やかましい! かぐや姫話せよ!
栃城:これに嫉妬したおばあさんは先日ミステリーサークルを作っているチュパカブラを目撃したら、
   UFOに連れ込まれ頭にチップを埋められてイエスキリストの声が聴こえるようになったという特ダネで東スポの一面飾りました。
槍沢:だからなんの話だ。東スポもそんな誤報信じるなよ! 超常現象被せすぎだからさ。早くかぐや姫話してくださいよ。
栃城:別のある日おじいさんが竹を取りに行くと竹の中にちかちかと光る竹がありました。
槍沢:明滅? 点いたり消えたり? ピカーって光ってるんじゃないの。
栃城:不思議に思ったおじいさんはその竹を真っ二つに切ってみました。……上から。
槍沢:上から!
栃城:上から真っ二つに切ってみました。
槍沢:無理! 無理! 高さが無理!!
栃城:でいや! おじいさんは一声叫ぶと飛び上がりそのままぐんぐんと上昇していきます!
槍沢:なんの力だじいさん!
栃城:ブオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
   限界の高さまで到達したおじいさんはそこから一気に下降していきました。
   ズガガガガ! 圧倒的な力で切れていく竹。もう少しで真っ二つになるところでバシッ、グガガグガガ。
   急に斧が動かなくなりました。おじいさんが竹の中をのぞくと中では玉の様な女の子が斧を噛んで動きを止めています。
槍沢:なにしてんだかぐや姫!
栃城:おじいさんはそのこの世のものとは思えない光景に無視を決め込みました。しかし女の子は斧を放してくれません。
   しかたがなくなったおじいさんは女の子を家に連れて帰り育てることにしました。
槍沢:かぐや姫の噛む力の強靭さが気になるけれど、とにかく育てることになったわけね。
栃城:竹の中から女の子が生まれたというニュースで東スポの一面を飾ろうとしたおじいさんでしたが編集部に相手にされませんでした。
槍沢:どうでもいいよ。東スポ方針転換でもしたの?
栃城:西荻窪第八小学校三年二組の吉村渉くんが裏山でインド人を見かけたという大ニュースにもちきりで、おじいさんの話を聴いてくれなかったのです。
槍沢:またどうでもいいニュースとりあげたな。勝手にクラスの話題の的にでもさせとけよ。で、かぐや姫どうしたの?
栃城:かぐや姫と名づけられた女の子はすくすくと成長し、三月ほどで大人の女性にまで成長しました。
   美しく成長したかぐや姫は瞬く間に評判になり求婚を求めるものが後を絶ちませんでしたがかぐや姫は全ての求めを断ります。
   それでもしつこく言い寄ってくる男達にかぐや姫はある条件を出しそれが達成できたら求婚してもいいと言いました。
   その条件とは世界各地に散らばる宝を取って来いというものです。
   あるものには枝が金銀に輝く「蓬莱(ほうらい)の玉の枝」、あるものには「中堅俳優S・Tのアデランスの髪衣」。
槍沢:カツラかよ! そこ「火鼠の皮衣」だろ!
栃城:そしてまたあるものには「3丁目のコンビニでパンとジュース」。
槍沢:単なるパシリじゃん! ラッキーだなそいつ。
栃城:またあるものには一太刀で全てを切り裂く最強の名刀「夜叉神」を。
槍沢:急にまともですね。
栃城:それからパーティのレベルを70に上げておくこと。
槍沢:RPGかよ!
栃城:そして最後のものには「おもちゃ会社」
槍沢:そっちのタカラ!
栃城:を買収。
槍沢:無茶言うな! 
栃城:と厳しい要求を突きつけました。数ヵ月後男たちが求婚の品を持ってきたといいましたがそのいずれもが偽物でした。
   蓬莱の玉の枝ではなく茶色のスーパーボール3個。
槍沢:違いすぎだろ! 騙す努力をしろ!
栃城:中堅俳優S・Tのアデランスの髪衣ではなく、火鼠の皮衣。
槍沢:いや、それであってるんだよ! 火鼠の皮衣でOKなんだよ!!
栃城:3丁目のコンビニではなくイギリスはロンドンのコンビニのパンとジュース。
槍沢:そいつなんでそんなに頑張ったんだよ!
栃城:どこの3丁目かわからなかった。
槍沢:近所のだよ! 西荻の3丁目のコンビニだよ!
栃城:最強の名刀夜叉神を頼まれた男は、夜叉神を手に入れた後もプレイを続けてしまい姫より先にクリア。
   姫をおこらせてしまい結婚は無しにされました。
槍沢:よっぽど楽しかったんだろうね。
栃城:そして最後の男は、おもちゃ会社ではなく宝酒造を買収。
槍沢:おしい! つーかよく買収できたな。
栃城:こうして男たちの求婚を断った姫ですが、次に帝から求婚されてしまいます。ただの男たちから帝へいわゆる強さのインフレです。
槍沢:なんの話だよ。
栃城:主人公の戦う相手がより強いものより強いものに乗り越える障害がより高いものより高いものになっていき物語が袋小路に入っていくという強さのインフレです。
槍沢:説明しなくていいよ!
栃城:ジャンプのマンガによく見られます。
槍沢:お前、かぐや姫ジャンプに連載してんのか? してないだろ!
栃城:そして帝はかぐや姫の出したドラゴンボール7つという条件を達成してしまいます。
槍沢:本当にジャンプで連載! 帝よく集められたな!
栃城:この事態にもかぐや姫は動じることなく神龍に頼んで結婚をなかったことにしてもらいます。
槍沢:ひどい女だかぐや姫!
栃城:さて今日の話はここまでです。
槍沢:終わり!? あとちょっとなんだから最後までやんなよ。
栃城:次回予告!
槍沢:なんだよ。
栃城:今明かされる衝撃の告白。おばあさん、話があるの……。 えっ!?
   おじいさん。姫から話が……。 な!? それは本当か……。
   帝さん。姫から話が……。 …………ん? いまなんか言った?
槍沢:聴いてねえのか! 聴いとけ帝!
栃城:スティーブ姫から話が……。 OH MY GOD!!
槍沢:誰だー!! その外国人誰だー!! 
栃城:桃から生まれた……。
槍沢:最初の方で流れてきた? 桃から生まれておいてスティーブはないでしょ。てかこの数珠繋ぎなんですか。
栃城:帝と月の使者との間で激化する戦闘。戦闘機から放たれる爆撃の雨に鳴り響く大砲の轟音。
槍沢:規模でかすぎるだろ!
栃城:サルさんは敵をひっかいて、キジさんはくちばしで突っついて!
槍沢:お供も参戦!? 爆撃機の前じゃなすすべないと思うんだけど。
栃城:イヌさんは夜通しほえて、敵を不眠症にさせ士気を低下させるんだ!
槍沢:戦術が遠回り過ぎるよ!
栃城:トム。また……戦争なの?
   ああ、かぐや姫を月に取られないように戦うんだって。
   そうなんだ……。ねえ、トム。平和になった時はあたしとの約束を守ってよ。
   ああ、今度の戦いが終わったら軍隊を辞めて君と二人で農場を開くよ。
槍沢:なにこの戦争映画みたいなやりとり。確実にトム死ぬよね。
栃城:その時かぐや姫が叫んだ。やったー全クリー!
槍沢:状況わかってないだろ! なにのんきにゲームしてるんだよ!
栃城:そして感動のラストシーン。さよならおじいさん。涙ぐむおじいさん。(棒読みで)かぐやひめーいつでもかえってこーい。
槍沢:なんで棒読みだじいさん! 一番感動するところじゃん!!
栃城:こうしてかぐや姫は月に帰っていきました。
槍沢:予告で言っちゃった!
栃城:次回最終回5時間半スペシャルかぐや姫最後の聖戦。
槍沢:引っ張りすぎでしょ5時間半て!
栃城:そうは言ってもトムの農場暮らしとか描くとなるとこれぐらい必要なんですよ。
槍沢:どこ広げようとしてるんだよ! 
栃城:こういう記事が東スポに載ってたんですよ。
槍沢:完全にガセだよ! いいかげんにしろ。
2人:どうもありがとうございました。




第248回 453KB(1位)
コント/殉職
好きなネタ枠。名セリフ「ごめん、まだもうちょっと生きられるわ」

栃城:ついに追い詰めましたね。
槍沢:ああ、しかし油断はするな。いくら右脚を負傷しているとは相手は凶悪な連続銀行強盗犯だ。現に今も拳銃を所持している。
栃城:はい。
槍沢:ここは俺が説得に当たる。お前は後ろで何かあったときのために控えていろ。
栃城:はい!
槍沢:おい、鈴木! そこにいるのは分かっているんだ。おとなしく出てきてくれないか。もう疲れただろう。脚の傷も痛むだろうし、早く楽になれ。
   …………ようやく出てきてくれたな。さ、楽になっていいんだぞ。そんな物騒なもの構えてないでこっちに渡してくれ。
SE:パン!
槍沢:うぐ……(腹部を押さえよろめく)
栃城:先輩!(崩れ落ちた栃城を抱きとめる)
槍沢:すまない、俺の方が油断してたみたいだ……。
栃城:喋らないでください! 今、救急車を呼びますから……。
槍沢:いや、いい。どうやら急所に当たっちまったみたいだ。もうすぐ死ぬわ。
栃城:! そんなこと言わないでください!
槍沢:……家族に伝えたいことがあるんだ。伝言してくれるか?
栃城:はい!
槍沢:まず女房に、今まで心配かけてごめん。とうとうその心配どおりになっちゃったな……。
   いまさらだけどもっと愛してるって言えばよかったって思うよ。誰よりも大切な人なのにその気持ちを伝えられなくてごめん。
   息子には、運動会見に行けなくてごめん。立派なパパになろうと頑張ってたけれど、こんな所でさよならだなんてダメな親父だな。
   お前はこんなダメな親父にならないよう、愛する人を何よりも大切にしてやるんだぞ。それと徒競走頑張れよ。
   そして最後に。お前は優しい。この職業に向いてないんじゃないかってくらい優しい。時には甘く見えることもあったが。その優しさはお前の魅力だ。
   これからも、その気持ちを忘れず職務を全うしてくれと、俺の弟みたいな新米刑事さんに伝えておいてくれ!
栃城:……はい!
槍沢:ふふ、さてどうやらそろそろお別れのようだ……。
栃城:……先輩! 先輩! ……なぜあなたが死ななきゃいけないんだー!!!!
槍沢:……………………。
栃城:……………………。
槍沢:………………………………。
栃城:………………………………。
槍沢:…………………………………………。
栃城:…………………………………………。
槍沢:……ごめん、まだもうちょっと生きられるわ。
栃城:あ、ですよね! ですよね! さっきから呼吸音聴こえるからなんかおかしいなとは思ってたんですよ。
槍沢:いやあ、目瞑ってればそのうち死ぬだろうとは思ったんだけどね。沈黙に耐えられなかったわ。
栃城:まったく、先輩は。最期の最期までしぶといんだから!
槍沢:お前も見習えよ!
二人:ハハハハハハ!
栃城:でもこうなると、先輩が本当に死ぬまでなんか気まずいですね。
槍沢:まあ、もうすぐ死ぬと思うから適当にゲームでもして時間潰そうぜ。
栃城:いいですね。じゃあ、古今東西ゲーム!
二人:イエーイ
栃城:殉職シーンの名台詞 (パンパン)なんじゃこりゃあ!
槍沢:(パンパン)まだやりたいことあるんだよぉ!
栃城:(パンパン)そして最後に。お前は優しい。この職業に向いてないんじゃってくらい……
槍沢:それ俺のじゃん!
栃城:だって心に沁みたんですもん!
槍沢:だからって名台詞に入れちゃうのは恥ずかしいって!(ひじで小突く)
栃城:いいじゃないですか〜。もう、この〜コチョコチョコチョ(脇をくすぐる)。
槍沢:馬鹿、そこ弱いからやめろって! ハハハハハ……ハァ。
栃城:で、先輩。そろそろどうです?
槍沢:うーん……。まだもうちょっと生きられそうだな。
栃城:そうですか……。あ、そうだ! せっかくですから辞世の句とか作りません?
槍沢:いいねそれ。作ろう作ろう。……でも、俺俳句とかよく知らないんだよね。やっぱり季語とか入れた方がいいの?
栃城:じゃないんですかね? その方が締まりますし。たとえば先輩はもうすぐ死んじゃうんですから「桜散る」とか……。
槍沢:いいねそれ! 五・七・五のどっちかの五にそれ使おう。刑事だから桜田門とも掛けられるし。
栃城:ありがとうございます! ……でも、今秋ですからね。桜って季節じゃないんですよね……。
槍沢:じゃあ、季節はずれのとかつけたらどうだ? 「季節はずれの 桜散る」って感じで。
栃城:先輩冴えてる! そのアイディアいただきです。
槍沢:よし! じゃあこれで残りは最初の五文字だけになったな。
栃城:先輩、僕にいいアイディアがあるんですけど。
槍沢:え、なになに?
栃城:先輩刑事じゃないですか。だから「ポリスマン 季節はずれに 散る桜」
槍沢:英語?
栃城:ダメですか?
槍沢:だって雰囲気ぶち壊しじゃん。それだったらまだ、刑事一人(デカひとり)とかの方が……
二人:それだ!
栃城:先輩すげえわ! こんな簡単に作っちゃうなんて。
槍沢:こんなことなら生前に俳句の勉強とかしておけばよかったな。
栃城:「刑事一人 季節はずれの 桜散る」いいですねえ。で、先輩。辞世の句も出来たところでそろそろどうですか?
槍沢:うーん……。まだもうちょっと持ちそうだなあ。
栃城:そうですか……。あの、こういう言い方は失礼かもしれませんが、本当に死にますよね?
槍沢:死ぬよ! え、なに疑ってるの?
栃城:だって、撃たれてから大分時間経つのにまだ生きてるじゃないですか。
槍沢:ま、そうだけどさ。
栃城:かまってほしいだけってことはないですよね?
槍沢:そんなわけないだろ! もうすぐ死ぬって。ほら、血がドクドク出てるの見えるだろ!?
栃城:ていうか、思ったんですけど、仮に死ぬほどの傷でも、こんなに長く喋れてるんなら最初に救急車呼べば余裕で助かったんじゃないですか?
槍沢:いまさらそんな事言うなよ! 俺だってここまで持つとは思わなかったんだもん。
   てか俺だって気づいてたよ! 辞世の句作り始めた頃には、あれ、俺助かってたんじゃって思ってたからね!
   でも、いまさら言ってもしょうがないから、一旦生への望みを捨てて「桜散る」とか考えたんだからね!
栃城:「桜散る」は僕が出したんですからね!
槍沢:どっちでもいいよ! とにかく、人が一旦完全にあきらめたこと蒸し返さないでくれる?
   思い出したけど、俺を撃った犯人ってどうなったの?
栃城:あ……。先輩が撃たれたパニックで取り逃がしました。
槍沢:なにやってんだよもう! 俺が撃たれた意味ないじゃん!
栃城:これで数ヶ月の捜査が振り出しに戻りました。
槍沢:なんだよもう、こんなことじゃ死んでも死に切れないよ……。
栃城:どうせ死なないくせに。
槍沢:だから死ぬって!
栃城:あ、そうだ。最期の言葉は辞世の句じゃなくて、ポエムにしませんか?
槍沢:ポエム?
栃城:ええ、で黒背景にピンクの極小文字のやけにゴテゴテしたデザインのブログにアップすればいいんですよ!
槍沢:痛い女子中学生じゃないんだよ! エセメンヘル気取ってるわけじゃなくて本当に死にそうなんだって。だからお前に伝言託したんだろ!
栃城:その伝言だって僕介さなくても自分で言えばいいじゃないですか。そんなに喋れてるんですから。
槍沢:わかったよ! ……もしもし、俺だよ。実はさ、もうすぐ死ぬんだよ。……いや、冗談とかじゃなくて。銃で撃たれたんだよ。
   で、死ぬ前にお前に伝えたいことがあってな。愛してる。……浮気なんてしてないよ! ごまかすとかじゃなくて……。
   忙しいから切るってなんだよ! おいおい待ってくれ、なあ、おい。おい。おーい……。嘘だろ……。
栃城:奥さんにすら信じられてないじゃないですか。
槍沢:あーもう、死ぬわー……。今の精神的ショックが決め手でようやく死ぬわー。
栃城:あーそうですかそうですか。あの、僕タバコ吸ってきていいですか?
槍沢:ああ、好きにしろ。
栃城:(舞台上手に移動)シボッ、プハー。
槍沢:う、ぐ、うああぁぁ…………。
栃城:フー。さてと、先輩どうですか? そろそろ死にましたー?
槍沢:…………。
栃城:先輩? 先輩? (槍沢をゆすぶる)先輩……。死んでる……。嘘だろ……。
   なぜだ、なぜあなたのような立派な警官が死ななきゃいけないんだー!!!!
槍沢:それ本心で言ってる?
栃城:まだ生きてるのか!




第7回C大会セミA 846KB(4位)
コント/ハイジャック
長年恨めしかった800の壁をぶち破ったコント。

アナウンス(音声):本日は言霊航空をご利用いただき誠にありがとうございます。当機は131便、羽田発大阪行きでございます。
槍沢:おい、お前ら動くな! いいかよく聴け! たった今からこの機はハイジャックさせてもらう。
   なに、安心しろ。おとなしくしていれば危害は加えないと約束する。じゃあ、今から言う要求を機長に伝えろ。
   まず、この飛行機を本来の目的地である大阪から北海道へ向けろ。そしてそこで……
栃城:ちょっと待ったあ!
槍沢:……!? なんだお前は! おとなしくしていろと言っただろ。 う、撃つぞ!
栃城:もう、なんのつもりだよ!
槍沢:こっちの台詞だよ……。お前こそなんなんだよ。
栃城:俺もハイジャック犯だよ!
槍沢:え?
栃城:だからハイジャック犯だよ! ほら、見てみろ。ナイフとかも用意してきたんだぞ!
槍沢:え、じゃあなに。この飛行機ハイジャックが二人乗ってるの!?
栃城:そうですよ。で、俺の要求は沖縄に行けって事なんだけど、目的地沖縄でもいいよね。
槍沢:いいわけないだろ! 大体なんだよ後から言い出してきて。
栃城:ちゃんと「ちょっと待った!」って言ったじゃん。これがねるとんパーティなら条件は一緒ですよ!
槍沢:なんの話だよ。
栃城:言っておきますけど、俺だって先にハイジャックしたあなたが沖縄に行けと要求してたらおとなしく乗ってましたよ。
   それなのに、あなたは北海道に行けだなんていうから、しかたなしにやってるんですからね!
槍沢:なんで俺が責められてるんだよ。
栃城:もう、最悪だよ。せっかく手間省けると思ったのに……。
槍沢:手間省くとかそういうもんじゃないだろ、ハイジャックって。目的があってやるもんだからね。
栃城:大体、あんたはなんで北海道に行きたいの?
槍沢:……実はな、網走刑務所に俺達の指導者が囚われていてな。
   まずその人を解放してもらい、その後俺達を受け入れてくれる某国へ亡命するんだよ。
栃城:……そんな理由かよ! くだらねえ。
槍沢:……そういうお前はなんの目的があって沖縄まで行くんだよ?
栃城:観光ですよ。
槍沢:は?
栃城:だから、観光ですよ観光。
槍沢:ちょっと待て、ちょっと待って。え? じゃあもしお前がハイジャック成功して沖縄行ったとする、で空港ついたとするわな。
栃城:その足で観光ですよ。
槍沢:おかしいだろ!
栃城:ビーチ行きますよ。ビーチ。八月の青い空の下、同じくらい青い海を泳ぎに行きますよ。
槍沢:どうでもいいって、ビーチ行こうがソーキソバ食おうが好きにしろよ。
栃城:食いますよ〜ソーキソバ。楽しみで楽しみで美味いソーキソバの店ネットで調べてきたんですよ。
槍沢:だから知らないって、お前の観光プランは。
栃城:楽しみすぎて今から着てきちゃったんですよ、(シャツを一枚脱ぐ)海人Tシャツ!
槍沢:現地で買えよ! 東京からわざわざ着ていってもしょうがないだろ。てか、本当に観光目的なの? 政治的な目的とかないの?
栃城:あるわけないでしょ。
槍沢:じゃあ、なんでハイジャックなんてしてるんだよ!
栃城:実はチケットの予約するとき間違えてこの便を取っちゃったんですよ。でも、どうしても沖縄に行きたいから……
槍沢:キャンセルして取り直せばいいだろ!
栃城:やりかたがよく分からなかった。
槍沢:窓口で質問しろ! ていうか、そんなことも分からないのによく機内にナイフ持ち込めたな!
栃城:あ、これ偽物ですから。芝居とかに使う小道具で、劇をやりに行くんですって説明したら通してくれました。
槍沢:手の内バラしちゃったよ!
栃城:そういうわけで、沖縄行きってことでいいですね。
槍沢:だからよくないっての!
栃城:うーん、もうしょうがないなあ。じゃあ、妥協しましょう。北海道に行ってもいいです。
   その代わり、その某国に亡命するときに沖縄経由で移動してください。これでいいでしょう。
槍沢:嫌だよ! そんな面倒な移動してられるか。
栃城:ついでじゃないですか。
槍沢:もののついでで日本縦断なんて出来るか。
栃城:じゃあ、この後要求とか出すんでしょ? その中に至急沖縄行きの便を手配しろって入れといてください。
槍沢:だからなんでお前の都合に合わせないといけないんだよ。
栃城:強情な人だなあ……。
槍沢:こっちの台詞だよ(栃城に背中を向ける)
栃城:今だ! (槍沢の首にナイフを押し付ける)喉を切られたくなかったら、おとなしく沖縄行きに……
槍沢:(振りほどいて)小道具だろ!
栃城:ダメかー!
槍沢:今の行動のどこに勝算があったんだよ!?
栃城:忘れてるんじゃないかと。
槍沢:あんなインパクトのある事実忘れられるか! てか、喉にグイグイ当たってたからね。
栃城:実力行使でもダメとは、本当に強情な人だ。
   じゃあ、もういいです。沖縄観光は諦めました。北海道観光することにします。
   ただ、沖縄に行けなかった責任はとってもらいますよ。
槍沢:責任ってなんだよ。
栃城:急な事で全然調べてないから北海道の事教えてくださいよ。
   北海道を味わうにはどこに行けばいいんですか、名所はどこですか? 北海道の魅力ってなんですか!? 美味いソーキソバの店はあるんですか!!!
槍沢:知らねえよ!!! 結局食うのかソーキソバ!
栃城:楽しみですから。
槍沢:北海道行ってるんだから寿司とか食えよ。
栃城:馬鹿言う! 夕食はソーキソバ食う金しか持ってないのに寿司なんか頼んで帰りの飛行機代なくなったらどうするんですか!
槍沢:お前の懐事情は知らないよ。
栃城:あ、そうか。ハイジャックすればなんとななるかも……。
槍沢:やめておけ! 絶対向いてないよ。
栃城:とにかく、沖縄行けない代わりに北海道旅行のプランを考えてくださいよ。
槍沢:面倒くせえなあ……。それで代わりのプラン考えてあげれば納得するのね。
栃城:ええ。北海道の観光名所ってなにがあるんですかね?
槍沢:そりゃたくさんあるだろう。
栃城:そうだ。あれ見に行こう! 「さっぽろ雪まつり」
槍沢:やってるわけないだろ。
栃城:そんな! 北海道といったらさっぽろ雪まつりでしょ!
槍沢:今何月だと思ってるんだよ。
栃城:だって北海道でしょ!?
槍沢:北海道を何だと思ってるんだよ。そんな年中雪降るほど寒くないから。
   てか、年がら年中降ってたら、わざわざ特定の期間だけ雪メインの祭りとか開かないから。
栃城:警察に雪まつりを急遽開催するよう要求してもらえないですか?
槍沢:無茶言うなよ。そんな要求突きつけられて警察もどうすればいいんだよ。
   札幌観光ならベタに時計台とか見ればいいんじゃないの?
栃城:じゃ、そうしますよ。
槍沢:あと、札幌じゃないけれど旭山動物園は?
栃城:あ! それいいな。行く、行く。
   旭山動物園で、イリオモテヤマネコとハブとマングース見ていく。
槍沢:いねえよ。多分だけどさ。この期に及んで沖縄に未練持ってるんじゃねえよ。
栃城:じゃあ、時計台見て旭山動物園行きます。
   で、富良野でラベンダー畑を見て、地元の味を食べたいんで千歳で千歳飴食べます。
槍沢:いや、別に千歳の食べ物じゃないからね、千歳飴って。そこもベタに白い恋人でよくない?
   てか、結構移動するけど金とか大丈夫なのかよ?
栃城:大丈夫ですよ。全部徒歩移動で金かからないから大丈夫ですよ。
槍沢:歩いて行ける距離じゃねえだろ! なんで電車とか使わねえんだよ!
栃城:僕は少しでも沖縄気分味わいたいんですよ。それなのに電車なんて最悪ですよ。
槍沢:だから、未練を捨てろ。てか、電車がないって点だけで沖縄気分を味わおうとするなよ。
栃城:あ、そうだ。それからこの「海人Tシャツ」。これ、北海道行くのにこんなの着てたらおかしいじゃないですか。
   だからこれ、マジックで「北海道人(ほっかいどうんちゅ)Tシャツ」にしてくださいよ!
槍沢:なにその無理矢理な言い方! ……それ書けば納得するのね?
栃城:はい。
槍沢:これで北海道行けるんならやるよ。ほら、マジック貸して。
アナウンス(音声):皆様にご連絡申し上げます。当機はまもなく大阪国際空港に着陸いたします。シートベルトをしっかりとお締めください。
槍沢:え、ちょっと……。なに、着陸って!? しかも北海道でも沖縄でもなく大阪?
   ……どっちに行くのか揉めてるから、とりあえず大阪に向かっていたら着いちゃった。なるほど。
   ……もしかして、言い争いを見守ってるうちに警察に連絡し忘れたってことは……ないですよねー。今空港で待ち構えてますかー。……ハァ。
栃城:大阪に美味いソーキソバの店はあるんですかね?
槍沢:知らねえよ!




第128回 533KB(1位)
漫才/誘拐
歴代2位(当時)のスコアでスランプを払拭。青バト屈指の名作漫才!

槍沢:はいどうも、言霊連盟です。
栃城:よろしくお願いします。いやあ、実は俺、さっき小学生を誘拐してきたんだけどさ。
槍沢:何してるんだよ!
栃城:どうやって人質の家族と身代金の交渉をしたらいいかわからないんだよね。
槍沢:まず、警察に自首しろ。
栃城:で、ちょっと電話を使った身代金交渉の練習したいんで付き合ってもらえますか?
槍沢:そんなことよりも、まずはすぐに子供を解放して、警察に……。
栃城:プルルルル〜 プルルルル〜
槍沢:無視ですか? わかりましたよ。ガチャ。もしもし。
栃城:お宅のお子さんは預かった。
槍沢:な、なに? 本当か!?
栃城:ああ、ガタン 本当だとも。ゴトン 返して欲しければ、ガタン これから言うことを、ゴトン 聞くんだな。ガタン
槍沢:ちょっと、いいかな。なにさっきからガタンゴトンって?
栃城:こうすることで犯人のアジトは線路沿いにあると間違った情報を与え捜査に支障をきたすかなと。
槍沢:きたすわけねえだろ。叶わぬ望みだよそんなもん。で、えっと。わかったなんでも言うことは聞く。用件はなんだ!
栃城:金だよ、金。息子を返してほしければ身代金として7万円よこせ。
槍沢:少ないな! 7万程度ならバイトして稼げよ!
栃城:その金を使って四国に温泉旅行に行くのだよ。
槍沢:使い道どうでもいいよ。
栃城:いわゆる高飛びだ。
槍沢:高飛びって言うか観光だろ。それは分かったから息子が元気な証拠を見せろ!
栃城:わかった。はいチーズ パシャ。……今、写真を撮った。
槍沢:意味ないよ! 今見られないから!
栃城:ポラロイドカメラで撮ったんだぞ。
槍沢:関係ないよ。そうじゃなくて声だよ声。声を聴かせてくれ。
栃城:わかった。坊主、替われ。
   パパー!
槍沢:光策! 今、元気か!?
栃城:うん。ぼく元気だよ!
槍沢:そうか……。よし、じゃあ今どこにいるか分かるか?
栃城:いまあ?
   ガッターンゴットーン(必死に手を合わせる)ガッターンゴットーン(頭を下げる)。
槍沢:なに頼んでるんだよ!
栃城:………線路沿い。
槍沢:気遣われてるじゃん! 確実に苦笑しながら伝えたよな。
栃城:じゃあ、身代金はしっかり用意しろ。7万円で息子の命が助かるのなら安いと思え。
槍沢:本当に安いよ。
栃城:こんな感じでどうかな?
槍沢:どうかなじゃねえよ。まず、身代金が7万円てなんだよ。安すぎだろ!
栃城:いやでも、いきなり5000万とか1億円とか言ってもためらうでしょ。
   まずは7万円からスタートして、徐々に要求を吊り上げて最終的に5000万円を手にする作戦なんだよ。
槍沢:だからって最初のハードル低すぎでしょ。
栃城:最終的には身代金5000万円と逃走用の青春18きっぷを手に入れるんですよ。
槍沢:なんでさっきからちょいちょい観光気分なんだよ! 誘拐犯なのに逃走用ってのもわからないし。
栃城:さっきから文句ばっかり言ってますけどそれならあなたは出来るんですか?
槍沢:出来るよ。ちゃんと身代金の交渉してやるよ。
栃城:じゃあ、僕が参考に出来るような電話のかけかたを見せてくださいよ。
槍沢:いいですよ。
栃城:じゃあ、やってくださいよ。あ、そうそう。これでもう共犯だからな。
槍沢:……そんなこと言うなよ!
栃城:ガチャ はいもしもし〜。
槍沢:無視するな! えーあ、まあいい。お宅のお子さんは預かった。
栃城:あ、そうなんですか。いやすみませんねえ。わざわざ預かっていただいて。
槍沢:なんで感謝してるんだよ。児童館的な預かり方じゃないから。
   そうじゃなくて、誘拐だよ誘拐。息子さんを誘拐したんだよ。
栃城:ほ、本当ですか! 参ったなあ。新聞に載っちゃうよ。いや、嬉しいなあ。
槍沢:なんで喜んでるんだよ。新聞に載るのがそんなに嬉しいか。
栃城:芸能人とかと会えるかなあ。
槍沢:会えるわけないだろ! えーもういい。身代金は5千万円だ。
栃城:それは、一括でですよね。
槍沢:当たり前だろ!
栃城:なんとか10年ローン組めませんかね……。
槍沢:組めるわけねえだろ! 10年てもはや養育費じゃねえかよ。
栃城:じゃあ一括なのはわかりましたけど当日は何回に分けて運べばいいんですかね。
槍沢:一回でだよ! なんでお前はちょいちょい分けたがるんだよ。
栃城:でも、50円玉で5千万用意するわけですよね。
槍沢:万札に決まってるだろ! 50円玉で用意されてもかさばってしょうがねえよ。
栃城:でも、真ん中の穴にひも通したら持ち運びやすいでしょ。
槍沢:そんな気遣いいらねえよ。
栃城:ひもを結べばおしゃれなブレスレットになりますし。
槍沢:だからどうした。そんなものをおしゃれと思うファッションセンスも持ち合わせてないし。
   いいから話を聴け。身代金の5千万をボストンバックに詰め込んで、
栃城:青春18きっぷを握り締め、鈍行に揺られさあ、貧乏旅行の始まりだ。
槍沢:何の話だよ! 全然貧乏でもないし。ボストンバックに詰めた身代金の受け渡し場所は中央自然公園の噴水前だ。
栃城:ああ、あのそこで待ち合わせたカップルは必ず結ばれるという。
槍沢:どうでもいいよそんな情報。
栃城:いや、実は私も学生時代にそこでデートの待ち合わせをした事がありまして。
槍沢:ああ、そうですか。そりゃよかったですね。
栃城:初めて出来た彼女だったんで大事にしたんですけど、結局ジンクスどおりには行かず別れちゃいまして。
   もしあの後も彼女と付き合っていたらいったいどうなったんでしょうかね……。
槍沢:なに、初恋の淡い思い出に浸ってるんだよ! とにかくさっき言った場所に三日後の午後七時までに身代金をもってこい。
栃城:わかりました。
槍沢:わかったな。よし、せっかくだ。息子の声を聴かせてやろう。
栃城:別にいいです。ガチャ プープープー。
槍沢:なんで切っちゃうんだよ。
栃城:だって家帰ってくればいくらでも聴けるものをなんでわざわざ聴かなきゃいけないんですか。
槍沢:だから聴きたいんだろ! 
栃城:じゃあ、電話は今のやり取りを参考にさせてもらうよ。
槍沢:参考になるとは思えないんですが。ていうか、そもそもなんで誘拐なんてしたんですか?
栃城:実は俺には病気の妹がいてな……。
槍沢:そうだったのか……。でも、妹さんだってお前がこんなことして手に入れた金で手術したところで……
栃城:遊ぶ金欲しさだ。
槍沢:妹関係ないのか! なんだよ遊ぶ金って! 手術に大金が必要だからじゃないの?
栃城:マジアカがすごく面白いんだよ。
槍沢:聞いてねえよ! てか、遊びってゲーセンかよ。 
   あのさ、誘拐なんて成功するはずないから、もう警察に電話しな。今ならまだ引き返せるよ。
栃城:わかった。そうするよ。ピポパ。もしもし、警察ですか。実は小学生を誘拐したんですが……。
槍沢:ちゃんと罪償いな。
栃城:返して欲しければ身代金として7万円を用意しろ!
槍沢:いろいろわかってねえだろ! いい加減にしろ。