No.30 バーソロミュー教団&月影連盟

【バーソロミュー教団成績】
OA率:12/12 平均:435.00KB 最高:489KB 最低:409KB  ランク:A
【備考】12連勝&12連続オーバー400
出場回出場順KB勝敗順位 ネタの種類/タイトル
110回(期未勝利)4番4131位 コント/川畑探偵事務所のとある一日
118回(対馬)6番4771位 コント/ナンパ野郎の成れの果て
143回1番4133位 コント/脱獄計画の全貌
145回(名古屋)6番4292位 コント/Bartholomew revolution:Episode1ートイレ製作設置企業のとある一日ー
146回6番4291位 コント/Bartholomew revolution:Episode2ー自動販売機設置企業のとある一日ー
157回(文京)3番4093位 コント/親父と引き篭もりのストーリー
172回(ラッキー・10組)6番4412位 コント/Memories of graduation ceremony
173回(横浜・10組)7番4891位 コント/小説化の傑作と白雨の行進
180回(大阪・10組)4番4334位 コント/小説家と評論家のとある一日
5回CB6番714-7位 コント/Ifrit Overtureー175日後の俺の定めー
193回5番4091位 コント/Story of murder scene
196回6番4451位 コント/Revenge before spring vacation ー因果応報ー
207回1番4332位 コント/川畑探偵事務所と推理アニメのお話
6回CB5番866-4位 コント/川畑探偵事務所と助手のとある一日
6回CF5番806-11位 コント/南北代表奇術対決 -未遂-
【月影連盟成績】
OA率:6/6 平均:468.33KB 最高:533KB 最低:417KB  ランク:B
【備考】6連勝&6連続オーバー400、歴代3位タイの533KB
出場回出場順KB勝敗順位 ネタの種類/タイトル
222回(ラッキー)5番4572位 コント/概念の打開と憧憬の損失
263回1番4171位 コント/偽りの歴史
273回(阿南)6番5331位 コント/偸盗舞曲 -カジノを往く-
281回6番5091位 コント/汝、愛国心に呑まれる事勿れ
295回(シークレット)6番4332位 コント/追想の美学 -人に歴史有り-
300回(10組)7番4611位 コント/帝国直下 第十五狭閃師団の紛糾
8回CB8番874-2位 コント/見飽きた感傷が壁に張り付いている
8回CF3番682-9位 コント/落伍戯曲 -マフィアも往く-
紹介

エントリーNo.30、ラストを飾るは2組合計で18戦無敗のコント集団。
何と言っても彼らの凄さは決して400KBを下回らない抜群の安定感。
通常回では一度の負けも無し。3位でのギリギリオンエアですら2回と、
盤石の横綱相撲を青バトで見せた両者。
2組の成績に大きな違いはないが、月影連盟の533KBは大きな金字塔。
ネタは出場者中トップクラスのボリュームを誇り、
審査ページに起こす際の無駄な改行を直す作業にはいつも苦労させられましたよええ。
青バト名鑑のラストはこの5本で閉めましょう。



バーソロミュー教団
第110回 413KB(1位)
コント/川畑探偵事務所のとある一日
まさか(4期の)未勝利戦からここまで化ける挑戦者になるとはいやはや。

ここはとある街に佇む川畑探偵事務所。大した手柄も無く、担当する事件はいつも猫探しや食い逃げばかり。
一人の平凡な探偵が毎日退屈な日々を送っている。だが、その日は違った……




川畑:あー眠い。今日も依頼者なんて来ねぇだろうなぁー。

(コンコン)

主婦:あの……相談したいんですが……。

川畑:あ、どうぞこちらに座ってください。で、この書類に簡単な必要事項を書いてください。

主婦:ハイ……

川畑:で、どういったご相談で?

主婦:ハイ、実は……うちのポチちゃんがいなくなってしまったんです……

川畑:(なんだ、またペット探しか……。ここんとこずっとそれだもんな…。適当に済ませるか。)
    あーそうですか。で、年齢は?

主婦:ハイ、丁度今年で8歳です。

川畑:8歳ね。で、いつごろからいなくなったんですか?

主婦:ハイ、丁度昨日、一緒にデパートまで買い物に行ったときに……

川畑:………人間!?あんた、生まれたばかりのかわいい我が子に「ポチ」って付けたんですか!?

主婦:ハイ……何せ苗字が「犬神」なもんで…

川畑:そんな理由で!?今ものすごい僕の中で犬神家の一族の印象が崩れていきましたよ。

主婦:代々そういう名前なんですよ。

川畑:え…因みにご主人の名前はなんていうんですか?

主婦:ハイ、「犬神ポチ次郎」といいます……。

川畑:そこまでポチに固執した一族初めてみたわ!

主婦:ハイ、その他にも「ポチ乃助」や「ポチ彦」、「ポチドン」という名前の人が一族に……

川畑:怖い怖い!!しかもポチドンとかめっちゃ核兵器みたいやん!

主婦:因みに私の名前は「ポチ子」といいます。

川畑:なんで奥さんまでポチ関連なんですか!!
    世の中広しといえど「ポチ」が名前に付いた男女が結婚する可能性なんて皆無ですから!

主婦:何せ、私の旧姓が「犬井」なもんで…

川畑:あ…そうですか…。妙に納得。

主婦:あの……話が反れてませんか?

川畑:あ、申し訳ない、何分ポチトークでこんなに興奮したの初めてなもんで。
    で、スーパーに買い物に行ったときに息子さんがいなくなったんですか?

主婦:いえ、娘です。

川畑:……娘さんが「ポチ」!?ってか、女の子にポチとかどんな名づけ親なんですか。

主婦:私の弟のポチドンです。

川畑:……ポチドン貴方の弟さんですか!やはり貴方の一族もポチが代々ついていったんですね……

主婦:あの…私の娘は…?

川畑:あ、申し訳ない、何分ここまでポチポチしてる名前を持つ一族に直面したの初めてなもんで。
    で、スーパーに買い物に行ったときに娘さんがいなくなったんですか?

主婦:はい、そうです。でもその後、店の人が私の前に来て……こう言ったんです。

川畑:………………

主婦:「貴方の娘さんは迷子センターの方で預かってますよ。」

川畑:見つかってるじゃねぇかぁぁ!なんでそれなのにわざわざここまで来たんですか!?
    
主婦:いや、もうこれは誘拐事件だ、と思ってこちらで相談しようと思いまして。
    そうだ探偵さん!うちの娘が誘拐されました!

川畑:もはや全ての現状把握してる状況で依頼内容変えられてもどうしたらいいんすか!!
    いや、っていうか今すぐデパートの迷子センターまで行ってください。

主婦:あの……身代金用意できないんですけど…うち貧乏なもんで……

川畑:いやいらんでしょ!!誘拐じゃないんですから!
    ってか、逆に店員さんパニくらせた業務妨害で罰金取られますよ。ほら、行った行った。

主婦:はい……いろいろと迷惑かけました。

川畑:はいはい、デパートの人にちゃんと謝ってね。

(バタン)

川畑:ふぅ……今の一件で1年分の食い逃げの依頼受けたくらい疲れた…。

(コンコン)

青年:あのー相談いいっすかー?

川畑:あ…どうぞ。(またなんか来たし)
    この書類を書いてください。で、ご相談は?

青年:僕、この先のラーメン屋のバイトをやっております、こういう者です。(名刺を渡す)

川畑:あ、どうも。探偵の川畑です。で、ご相談というのは?

青年:僕、仕事も上手くいかないし、ヘマばっかやらかして、店長さんに迷惑かけてばっかなんすよ。

川畑:ほぉ。

青年:だから、もうそこのラーメン屋はやめたんですよ。

川畑:ほぉほぉ。

青年:………僕どうしたらいいんですか!?

川畑:…何を!?貴方のバイト状況聞いただけなんですが!

青年:いやね、やっぱりバイトやめて後悔してるわけですよ。

川畑:あぁーもう少しよく考えてから決めるべきでしたね。
    でも、もう一回店長さんに頭下げたら許してもらえるんじゃないですか?

青年:ちょ、頭下げっ…………貴方確か、じゃがバタさんとか言いましたっけ?

川畑:川畑や!!そんなおいしそうな名前付けられても!

青年:そんなにバイトが甘くないことは貴方だって分かるでしょう。確かに僕、ラーメン屋に迷惑かけましたよ。
    麺とモヤシ間違えて国務大臣にラーメン、つーかラーもやし出したり、
    アメリカの国務長官が来てるときに勝手にチャーター機乗り回してエッフェル塔壊しそうになったり、
    中国の料理番組の生放送取材が来てるときに、カメラの前で『俺は金正日だぁー!』とかいいながら裸踊りもしましたよ。でも……

川畑:今すぐここから出て行ってくれ!!ってか、国際発展しすぎでしょそのラーメン屋!
    しかも何やねん、エッフェル塔壊しそうになったって。国外追放されてないのが奇跡やわ!!

青年:ほら、今もあのビルの屋上から北朝鮮の男が狙ってますよ。ハハハ

川畑:ちょ、ちょ!もう、とにかくあんたは警察にでも行ってください!
    探偵は北朝鮮の兵士を説得できるほど勇敢じゃないですから!ほら、行った行った!

青年:あーどうも、迷惑かけました。

川畑:はいはい、くれぐれも命とエッフェル塔は大事にね!

(バタン)

川畑:あぁーやべ、今の一件で3年分の猫探しの依頼受けたくらい疲れた…。

(コンコン)

女性:あの、失礼します。

川畑:はいどーぞー(また来たし!!いい加減休ませてくれよ!)
    で、どうされたんですかー?

女性:あの、不倫の調査を依頼したいんですが。

川畑:(お、きた!これだよこれ!やっぱ探偵ってのはこうじゃないとね!)
    まずこの書類に書き込みお願いします。で、どのような事で浮気が発覚したんですか?

女性:ハイ、うちのシロちゃんが隣の家のメリーちゃんと結婚してるっていうのに、
    最近お向かいのショコラちゃんがシロちゃんと一緒にドッグフード食べてるのを目撃したんですよ。

川畑:犬かよ!!犬の不倫依頼とかどうやって解決しろっていうんですか!

女性:つきましては、シロちゃんの不可解な行動を写真にとっていただけたらなぁ、と。

川畑:犬の素行調査!?向かいの家なのにそこまでする必要ないでしょ!

女性:駄目ならシロちゃんと会話してくれるだけでも…

川畑:俺はムツゴロウか!!バウリンガルでも買って自分でなんとかしてください!

女性:なんですか、探偵っていうのは浮気の調査も出来ないんですか。

川畑:動物のね!!人間ならやりますよ!

女性:まぁいいです、他の探偵さんのとこに行きますから。

川畑:多分行っても「俺はムツゴロウか!」ってツッコミされるのがオチだと思いますけどね。

女性:ふん、もういいですよ。はいどーも、ありがとうございました。はいどーも。

川畑:はいはい、是非シロちゃんを大事にね。

(バタン)

川畑:へぇー………こんなに疲れたの、小学生の時初めてみかんを見て、
    いっぱいついてる白いやつをゴミだと勘違いして1時間かけて全部取った時以来だよ……。
    国外追放されそうな男性に、犬っぽい人間と人間っぽい犬の相談か……。
    そういや、一件目のポチちゃん見つかったかな。あのポチ子さんもドジだよなー。

(コンコン)

川畑:(ん?また誰か来たのか?)はい、どーぞー

少女:あの……

川畑:あれ?どうしたのお嬢ちゃん、相談かい?どうしたの?

少女:あの、突然うちのママがいなくなったんですが。

川畑:あららお母さんが。お嬢ちゃんの名前は何て言うの?

少女:えっと、犬神ポチっていいます。

川畑:……デパートの迷子センターに行けー!!!!




バーソロミュー教団
第173回 489KB(1位)
コント/小説化の傑作と白雨の行進
オンバト式長文企画最多放送の記念回で1位をとったネタ。

栢山:先生、どうですか?新作品、出来ましたか?

仙道:あぁ、出来たよ!最高傑作、素晴らしい家族愛を描いたアットホーム小説が!
    250ページにわたる超大作!絶対売れるね此れは!

栢山:なんとか間に合いましたね!早速、全国のホームレスに持って行きましょう!

仙道:何でだよ!!幸先喧嘩売ってるじゃねぇか!

栢山:え?全国の家庭の無い皆さんに夢を与える作品じゃなかったんですか!?

仙道:なかったんですよ!残念ながら、僕はそういうボランティアーな作品書いてませんから!

栢山:なら、大まかな内容を教えてくださいよ。

仙道:あぁ。
    とある町に、一つの家族が居て、急に娘が病気になるんだよ。

栢山:なんて感動的なんだぁぁー!!!

仙道:何処が!?娘の病気宣告に感動しないで!
    ここからがいいんですよ。もう治らない病気だと思っていたのに、
    家族の必死な願いが通じて、結局病気が治っちゃうんだよ。

栢山:ベタな話NO.1ですね。

仙道:感動したのか貶したいのかどっちなんだよ!!いくらベタでも、作者の思いが伝わったらいいんだよ。
    それで、その娘の病気が治ったときに、不思議と白雨が降るんですよ。で、主人公のセリフが、
    『きっと、家族の愛が神に伝わって、聖なる白雨が降ってきたんだ!』ですよ。名言中の名言ですよ!

栢山:ふーん。死ね。

仙道:えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!酷くない?

栢山:というわけで、早速、契約してる『URENAI・出版社』に渡してきますね!

仙道:…何処だよ!さり気に「売れない出版社」じゃねぇか!
   違ェよ、俺が契約したのはもっと大規模な『バーソロ堂』だよ!

栢山:そうでしたね!早速、売り込んできます!

仙道:不安だなぁ……

-------------------------数日後-------------------------------


栢山:仙道先生!
    仙道先生の新作品のファンレターや苦情の手紙や不幸の手紙が殺到してますよ!

仙道:なんで2/3がちょっと傷つくことなんだよ!!しかも、不幸の手紙って本に全く関係ないじゃん!

栢山:じゃぁ、不幸の手紙から読み上げていきますね!

仙道:余計凹むよ!どうせなら、ファンレターのほうから読んでいってくれ。

栢山:分かりましたー。じゃぁ、1枚目から。
   『今までの仙道先生の作品とはちょっと違った感じで、とても良かったです!』

仙道:おぉ、分かってくれてる人もいるんだなぁ!

栢山:『今回の作品は、レベルが高かった』

仙道:うん、何のレベルか分からないけど有難う!

栢山:『今までと比べて、ちょっと物足りない気がしました。』

仙道:そういう意見もいいよね。

栢山:『仙道バーか』

仙道:………

栢山:『次の作品も期待しています!がんばってください!』

仙道:…有難う。

栢山:えー、続いて2枚目です。

仙道:…今ので1人分!?喜怒哀楽が激しすぎじゃぁありませんか!?
    高レベルとかバカとか頑張れとか!

栢山:2枚目
    『19ページの冒頭にある「そして」って接続詞が素敵でした!』

仙道:その言葉の何処が素敵なんだよ!!普通に何処でも使ってるよ!

栢山:3枚目
    『125ページの最後にある「…」が感動的でした。』

仙道:病んでますか貴方!?内容で感動してくださいよ!

栢山:4枚目
    『49ページに多用されている「ぬ」って平仮名が魅力的でした!』

仙道:何処に魅力を感じてるんだよ!もう、対処仕切れないわ!

栢山:5枚目
    『300ページ目は感動して泣いちゃいました!』

仙道:この小説に300ページなんて無いよ!!
   読んでないだろ絶対!

栢山:6枚目。
    『山道先生大好きです!』

仙道:名前間違えてるよ!そんな、オフロードっぽくないから僕!

栢山:7枚目
    『「きっと、家族の愛が神に伝わって、聖なる白雨が降ってきたんだ!」ってトコが胡散臭い』
 
仙道:一番の名言をダメ出しされた!!

栢山:8枚目
    『なんつーか、もっとギャグ漫画っぽいのが見たかった』

仙道:ならギャグ漫画買えよもう!!
   なんでこいつは敢えてアットホームな小説をチョイスしたんだよ!

栢山:以上がファンレターとなります。

仙道:全く嬉しくなかったよ!!結局もらったの全部最悪かよ!

栢山:残りは、苦情の手紙と不幸の手紙の二者択一ですがどうしましょう!?

仙道:無駄に盛り上げても所詮暗いよ!!もういいよ、不幸の手紙でもなんでもこい!

栢山:じゃぁ不幸の手紙から。
    『僕は不幸です。助けてください。終わり。』

仙道:いや、本当に不幸の手紙かよ!もうちょっとスタンダードなの予想してたよ!

栢山:さーて、残りは苦情の手紙!!Let's open it!!

仙道:いちいち鬱陶しいなぁ!!微妙なノリいいからさっさとあけてくれ!

栢山:1枚目
   『あのさぁ、こういう作品を俺に持ってくるって喧嘩売ってるわけ!? by.ホームレス』

仙道:ホームレスにプレゼントしてんじゃねぇか!!100%お前が悪いだろ!

栢山:2枚目
   『納豆で痩せるっていったのにー!!騙さないで!! by.主婦』

仙道:俺、関係ねぇよ!八つ当たりはやめてくれ!

栢山:3枚目
   『49ページに多用されている「ぬ」って平仮名が胡散臭い』

仙道:もう、“ぬ”ってなんなんだよ!!しかもそれを駄目だしされても悲しくないよ!

栢山:4枚目
   『仙道バーか』

仙道:またかいい!!ファンレターと苦情の手紙の区別がつかんわ!!

栢山:以上が、今回送られてきた作品への感想になります。

仙道:こんなに凹んだ感想集は初めてだよ!

(その時、パラパラと白雨が降ってくる)

栢山:あ、先生!先生の小説の中に登場する白雨ですよ!
    きっと、読者の怒りが神に伝わって悪魔の白雨が降ってきたんですよ!

仙道:うるせぇよ!!上手いこと言ってんじゃねぇ!

栢山:さて気を取り直しまして、次は抗議の電話、苦情のファックス、文句のメールを紹介します!

仙道:いや、まだあるのかよ!!




月影連盟
第273回 533KB(1位)
コント/偸盗舞曲 -カジノを往く-
あれから100回後、彼らはまた超高得点で1位をとった。

2001年に公開された、クライム・サスペンスの傑作“オーシャンズ11”
ダニー・オーシャン率いる11名のスペシャリスト達による、
前代未聞、史上最大の強奪作戦を描いた洋画作品である。


この映画に憧れ、そして彼らに憧れた少年が居た。






これはオーシャンズ11に憧憬を奮わせた、二人の高校生の後の物語――――











― 偸盗舞曲 ―





BGM:交響曲第3番変ホ長調『英雄』/L・V・ベートーヴェン








南西の町、“リビター”の一軒家にて




フランシス・レイモンド:なぁマーキュリー。この世で一番素晴らしい映画は何だ?

スリザー・マーキュリー:愚問じゃないかレイモンド!当然、ブルース・ウィリスのアクション大作「ダイ・ハード」さ!

レイ:違ーう!そこボケるとこ違ーう!
   ダイ・ハードも面白いけどそこやっぱりボケるとこ違ーう!

マー:ハハッ、冗談さレイモンド。
   何て言ったって一番素晴らしいのは、ジョージ・クルーニー主演の「オーシャンズ11」さ。
   絶対侵入不可のラスベガスカジノの地下大金庫に、たった11人が挑む、
   こんなに爽快な犯罪映画はまたと無いね!

レイ:流石解っているなぁ、マーキュリーは。
   そこでだ!我々も彼らのように、
   少人数で絶対不可と謳われたカジノの金庫に侵入する計画を遂行しようと思うんだ!

マー:おぉ、凄いじゃないかレイモンド!俺たちも遂に、あのオーシャン達のように輝けるんだな!?
   高校の女子連中の間で「死んだ魚の肛門」と呼ばれてる俺たちでも、彼らのように輝けるんだな!?

レイ:そうともマーキュリー!
   男子連中の間では「ピサの斜塔が傾きすぎたら真っ先に支えに行く2人」と呼ばれている俺たちでも、
   あのジョージ・クルーニーのように輝ける時が来たのだ!

マー:悲しくなるから全てを曝け出すのは後にしよう。
   それでレイモンド、カジノを狙うと行っても具体的に何処を狙うんだい?
   俺たちの街リビターには、全世界の頂上に君臨するカジノ、
   “リビター’s・アフェランドラ”しか無いが、まさか…?

レイ:そう、そのまさかさ…!狙うなら大物、我々の街のリビター’s・アフェランドラしか無い!!

マー:レイモンド!俺はお前を見損なっていたよ!まさか世界のトップのカジノを標的にするとは!

レイ:オーシャンズが狙ったのも世界最高峰のカジノだ!
   我々が世界最高峰のカジノを目指す理由に何ら不思議は無い!

マー:その通りさレイモンド!
   それで、俺たちの他にはどんなスペシャリスト達を揃えているんだい?
   俺の持ち味と言えば、「すぐチクる」「すぐ見損なう」「五感が鋭い」くらいだが…

レイ:おいおいマーキュリー、情けないぞ!まぁかく言う俺の持ち味は、
   「ネーミングセンスが良い」「強行突破の勢いが良い」「なんかボタンがあったら押す」くらいだが。

マー:おいおいレイモンド、お前のほうが情けないじゃないか!見損なったぞ!
   そんな事だからお前は「3日に1回火災報知機鳴らす奴」と呼ばれて居るんだ。

レイ:火災報知機鳴らすのって、世界中の学生の憧れじゃん?

マー:じゃん?じゃねぇよ!そんな事どうでもいいから、何か凄い特技を持った連中を呼んでいるんだろうな?
   俺たち二人だけで出来る事といえば、
   精々火災報知機を鳴らしたお前を俺がチクることくらいだぜ?ハハッ。

レイ:二人だけだ。

マー:…へ?

レイ:スペシャリストなど呼んでいない。俺たち二人だけで実行するのだ!

マー:……ごめんマーキュリー、悪いけど俺傾きかけのピサの斜塔支えてくるわ…

レイ:おいおいおい待て待てレイモンド!どうしたというんだ、俺たちが輝く絶好のチャンスだと言うのに!

マー:もういいよ、俺将来「ピサの斜塔を支えた少年」の図で歴史の教科書に載ることにしたから…

レイ:ダメだよレイモンド!ズルいよ!いやズルいって言うか!そうじゃなくて!
   俺たちは世界最高峰のカジノの金庫に侵入する計画を立てたんだ!何故そこまで支えたがる!

マー:だって二人だけじゃん!変装やハイテク、爆破のプロフェッショナルでも11人要ったのに、
   俺たちみたいなん二人だけで何やるの!

レイ:バカ野郎!!俺たちみたいなん二人だけでやるからすげぇんじゃねぇか!!

マー:俺たちみたいなん二人だけでやれると思ってるお前がすげぇよ!

レイ:うむ…仕方ない、なら俺たちの数少ない友達を呼ぶことにしよう!
   一人くらい、なんか、万引き程度のことをやった奴がいるだろう!

マー:お前世界無計画ランキング第1位獲得だな





― 11分後 ―




レイ:全員に連絡とってみたよ!

マー:一応聞いてみるけどどうだった?

レイ:なんと驚き、全員に断られたよ!

マー:そりゃ死んだ魚の肛門みたいな顔して戻ってこられたら百も承知だわ。

レイ:ボブは頭痛、ジャックは歯痛、カールは腹痛、トムは腰痛、ニックは胃痛、
   イフリートは神経痛、クラウドは筋肉痛、スティーブは苦痛、ゴンザレスは激痛、
   マークはピサの斜塔の修繕工事で来れそうに無いらしい。

マー:どいつもこいつもボロボロじゃねぇか!何でそんなのしか居ねぇんだよ!
   そして最後は俺らの専売特許じゃねぇか!それ取られたら俺らただの死んだ魚の肛門だよ!

レイ:もういいじゃないか!二人でやろう!な!
   上手く計画を立てれば、たった二人でも金庫に入れるかもしれない!
   いや、寧ろ2人のほうが足手まといが居ずにやりやすいかもしれないじゃないか!

マー:大勢で作戦を仕組んで、その中の数名だけが金庫に到達するのが面白いのに…







― 作戦検討 Strategy examination ―







レイ:まず必要なのは、カジノ内の見取り図だ。これがないと話にならない。
   で、見取り図がなくて話にならないので、俺が妄想で書いた。見てほしい。

マー:見るかよ!!誰がお前の妄想図見るかよ!!
   金庫に入るどころか金庫に辿りつけねぇじゃねぇか!

レイ:嘘、嘘!嘘やって!そんな怒らんといて!
   ほら、これが本物の見取り図だ。俺がおねしょで書いたのではないぞ?

マー:あるんなら最初から出せよ…。
   ……ほうほう、なるほど、実際入ったこと無いから解らなかったけど、結構広いなぁ…。
   区画も不規則で、全体的に角が丸くて、水色で湿ってて、
   何故か土台が紙ではなく敷き布団、おねしょじゃねぇか!!

レイ:斬新やな

マー:斬新じゃねぇよ!おねしょする奴カジノなんか狙わねぇから!

レイ:まぁまぁ、今のはウォーミングアップだ。
   ウォーミングアップリケだ。

マー:言い直してまで言うほどのもんかよ! 

レイ:まず当日の服装に関してだ。

マー:何か制約でもあるのか?  

レイ:俺たち2人だけとなると、金庫破りの為の道具が大量に必要になってくる。
   ポケットとかいっぱい付いた服装で来いよ?

マー:ポケット如きじゃ話にならねぇよ!

レイ:更に、もし金庫から大金を盗んだ後、
   その大金を持ち歩く為のものが必要だ。
   フードとかいっぱい付いた服装で来いよ?

マー:だからフード如きじゃ話になんねぇだろ!
   フードいっぱい付いた服とかどんなんだよ!

レイ:更に更に、ポケットに用具をいっぱい詰め、
   フードに大金を詰めた二人組が歩いてると、相当怪しまれるだろう。
   愛嬌を出すのが大切だな。
   アップリケとかいっぱい付いた服装で来いよ?

マー:行かねぇよ!!どこのお洒落さんだよ!!
   …とは言っても、やっぱ大きなバッグとかが要るんじゃないか?
   というかそんな大荷物持って怪しまれないか…?
   人の目に付き難い所を通らないとな…

レイ:その通りだ。まずは入り口のドア付近に警備員が5人立っているのだが、
   これらをどう切り抜けるかが問題だ。

マー:金庫以前の問題じゃねぇか!!
   近づいた直後「何やねんお前ら」みたいな感じで見られて撃沈やないか!

レイ:大丈夫だ!このリビター’s・アフェランドラというカジノには世界中のギャンブラーが集まってくるんだ、
   その中に大きなカバンを持ち歩くことに性的快感を覚える二人組が居てもおかしくはない。

マー:いやおかしいだろ!どんな性癖持ってんですかって話になるよそれ!
   まぁいいや、世界中のギャンブラーの中には荷物をいっぱい持ってる人もいる、って事で。

レイ:これでカジノ内に侵入することが出来た。
   中で注意する必要があるのは、カジノのオーナー、フレディ・ブレジネフ氏だ。
   何が危ないかと言うと、このブレジネフ、高校時代はいじめを受けていて、
   その時のあだ名が「ピサの斜塔が傾きすぎたら真っ先に支えに行く奴」だったそうだ。
   いわば俺たちの同業者だ。

マー:何で俺らみたいなのが他にも居るんだよ!

レイ:俺としても、未来の歴史の教科書に、
   世界一のカジノのオーナーがピサの斜塔を頑張って支えてる図が載せられるのは気分が悪い。
   そう、だからこそブレジネフを潰す為にこのカジノを選んだのだ。

マー:オーシャンズ11への憧憬は何処に行っちまったんだよ!!

レイ:オーシャンッ…!そうだ、俺たちはオーシャンズに憧れてこの計画に踏み込んだんだった!
   それを忘れてはいけないんだ…!
   よし、俺たちも彼らのような組織名を付ける事にしよう。
   今から俺たちは「レイモンズ2」だ。

マー:だせぇ!!名前と人数くっ付ければいいってもんでもねぇだろ!
   お前のネーミングセンスどうしたもんだよ!

レイ:新聞に載るだろうなぁ! 
   「世界一のカジノ、リビター’s・アフェランドラの金庫の金が盗まれた。
   現場にはカードが置いてあり、“レイモンズ2参上”と表記されていた。」

マー:すぐ捕まりそうなネーミングだし方法がだせぇんだよ!

レイ:こうしちゃ要られない!早速作戦の続きを考えよう!
   で、5人の警備員とオーナーを抜けると、ポーカー、ブラックジャック、バックギャモンなどの
   テーブル・ギャンブルが行われている。
   此処のディーラーは皆、イカサマを見抜いてきただけのことはあって、目が光っている。

マー:成程…、警戒して歩かないと行けないな。

レイ:つまり深夜に侵入したとしても、その目によって照らされる為実行不可能なのだ。

マー:リアルに目が光ってるの!?どこの深海魚だよそいつら!

レイ:5番テーブルのディーラー、アルフレッド・カーンには特に注意が必要だ。
   何故なら彼は中学校時代いじめられていて、
   付けられたあだ名が「ピサの斜塔が傾きすぎたら真っ先に蹴り倒しそうな奴」だったからだ。
   俺達が最も注意するべきライバルだな。

マー:どんな低俗な争いなんだそれは!その程度のライバル嫌だよ!
   そしてそいつにそのあだ名付けた奴呼んでこい!

レイ:俺としても、未来の歴史の教科書に、
   世界一のカジノのディーラーピサの斜塔を蹴り倒してる図が載せられるのは気分が悪い。

マー:当たり前だろうが!

レイ:5番テーブルと言えばポーカーだ、寄り道くらいしてもいいだろう。
   カーンに勝負を挑むんだ。

マー:まぁ、一戦やっておくのも悪くないな。

レイ:俺たちが修学旅行で見せた七並べの腕前を見せてやるのだ!

マー:七並べ関係ねぇだろ!

レイ:むしろお前の豊かな顔芸でディーラーを錯乱させる所存だ。

マー:明らかにポーカー向いてねぇじゃねぇか!

レイ:まぁそれはいいとしよう!
   次に、巨大金庫は地下にあるんだ。
   オーシャンズでは、監視カメラを風船で隠して警備員を遠ざけたり、
   ハイテク専門が奪ったカードでシステムに侵入したりしていた。

マー:その通り!俺たちはどんな事をするんだ!?

レイ:俺たちは到底出来っこないので、強行突入だ。

マー:持ち味をもっと上手く生かせよ!!

レイ:まぁ待て。いつもの俺なら、そうしていただろう。
   だが今回は違う、突入は不可能だ。

マー:それは当然の事だが、また何故?

レイ:エレベーターの横を屈強なガードマン、ロイ・ハーフォードが見張っているのだ!

マー:そうか、近付くとあっさり捕まるんだな?

レイ:いや、とてつもなく臭いんだ。

マー:臭いのかよ!

レイ:まるで死んだ魚の肛門のように。

マー:俺達じゃねぇか!!

レイ:だが、そんな臭いハーフォードが筋肉ムキムキになったのには、理由がある。
   彼は小学生の頃体が軟弱で、それが原因でいじめられていたんだ。
   その時のあだ名が「ピサの斜塔が傾きすぎたら真っ先によじ登りそうな

マー:もーいい!!もういいわ!!何でこの街そんなピサの斜塔に縁のあるあだ名が多いんだよ!

レイ:俺としても、未来の歴史の教科書に、
   世界一のカジノのガードマンがピサの斜塔によじ登って星条旗振ってる図が載せられるのは気分が悪い。

マー:皆そうだよ!世界中の皆が気分悪いよ!
   もういいよレイモンド、その次はどうなんだ?

レイ:いや、正直、カジノ内で分かってる事はこれだけだ。
   内装を詳しく知る為にこれからカジノに出向こうと思うんだが、どうだ?

マー:おぉ、それは良い考えだ。百聞は一見に如かずと言うからな。

レイ:本番と同じように、大きなカバンを持って行こう。

マー:それだと怪しまれないか?

レイ:バカ野郎、練習で出来ない事が本番で出来るわけないだろう!

マー:俺はお前を勘違いしていたようだ、見違えたぞマーキュリー!

レイ:絶対未来の歴史の教科書に載るんだ…

マー:見損なったぞマーキュリー!









― リビター’s・アフェランドラ入口前 ―








警備員A:何やねんお前ら

  レイ:撃沈したー!!

  マー:いや、あの、僕ら怪しい者では無くてですね…

警備員B:っていうか、お前ら何歳?

  マー:僕らは17歳ですけど…

警備員C:ここのカジノはねぇ、未成年は立ち入り禁止なの。そのくらい常識でしょ?

  レイ:なんやて!?

  マー:…いや、って言うかその通りだろ!
     何俺ら頑張って計画練ってたんだよレイモンド!

警備員D:今すぐ帰らないと痛い目見るよ?

  レイ:…はっ…走れマーキュリー!走るんだ!
     中に入ってしまえば人が多くて解りっこない!
     走るんだマーキュリィィィィィ!!!

  マー:お、おい待てよレイモンド!下見段階でこんな無茶してどうすんだよ!

警備員E:俺も何か喋りたかった…








― カジノ内 ―








マー:なぁレイモンド、確かに人は多くて目に付き難いけど、あまりにも広すぎじゃないか…?

レイ:何せ世界一のカジノだからな、これくらいは当然だろう…

マー:まぁそうだが……眩しっ!なんだ眩しいぞレイモンド!

レイ:5番テーブルのカーンがこっち見てるんだ!
   きっと俺たちの挙動が怪しいからだ、堂々としてよう。

マー:真昼でもあんなに光ってんのかよ……臭っ!なんだ臭いぞレイモンド!

レイ:エレベーター横のハーフォードに近付いてるんだ!
   きっと俺たち知らない間にエレベーター側を歩いてたんだ、別の道を行こう。……お?

マー:なんつー五感に害を及ぼすカジノだよ…
   しかし本当に広いな、ちょっと目を離すと迷子になりそうだ…
   監視カメラもあっちこっちあるな…
   二階からも色々監視されてるし、やっぱ侵入するのは無理じゃねぇか?
   なぁレイモンド…レイモンド?




ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリィィィィィィィィィィィン



マー:なぁっ、なんだなんだ!?何があったんだ!?

レイ:マーキュリー!

マー:レイモンド!何だこの音は!?何か起こったのか!?

レイ:すまん!火災報知機のボタンがあったもんで、ついつい押しちまった!!

マー:アホかお前!!

レイ:俺の前にボタンがあるのが悪いんだよ!
   全く本当に…マーキュリー?あれ、マーキュリー?

マー:あ、オーナー、ボタン押したのあいつです

レイ:チクんなてめええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!
   もういいやヤケクソだ、
   俺たちがオーシャンズ11の弟分、レイモンズ2だー!!!
   その汚ぇ目玉穿り返してよく見てやがれー!!!



(フェードアウト)












― 留置所 ―










レイ:なぁ

マー:…ん?

レイ:“マーキュリーズ2”の方がかっこよかったかな?

マー:そこじゃねぇよ




月影連盟
第281回 509KB(1位)
コント/汝、愛国心に呑まれる事勿れ
また1位っすか。またオーバー500っすか。

荒廃した東国、セントブルスでは今日も盗賊による反乱、襲撃が続いていた。
最早それが至極当然かのように、セントブルス王国政府も黙認せざるを得なかったが、
遂に地元の山賊を纏め上げるリーダー格の男が、政府に直接要求をしてきたのである。







これはその事件の、本の一部始終











- 汝、愛国心に呑まれる事勿れ -










(BGM:Amore traditore BWV203/J.S.バッハ)













- セントブルス王国政府本部控え室 -






王国政府総帥:君がガーネシア公国より派遣された外交官か。

レイ・ハーブル:申し遅れました、私がその外交官、レイ・ハーブルであります。
        本日は連盟国であるセントブルスの危機という事で、こうして此処に。

総帥:うむ、既に電報で内容は把握しているだろうが、もう一度簡潔に説明しよう。
   この国を拠点に活動する山賊のリーダーが毎度の如く国を荒らし、国民に多大なる迷惑をかけている。
   それだけならまだしも、早朝我々に「国民の命が惜しかったら、政府の役人を全員島流しにしろ」と、こう言うのだ。
   そこで、連盟国外交官である君に来てもらった。政府側としても、国民の命を最優先にしたいと思っている。
   是非山賊の怒りを沈め、国民を解放してもらうのだ!

レイ:成程、現状は全て此方に伝わった通りのようだ。
   我がガーネシア公国では既に、セントブルス王国での襲撃事件や反乱の噂は耳に入っている。
   さぞ農村などの食物の被害が著しいと思い、
   今我が国では政府が国中の畑に輸出用のプチトマト栽培を始めている。これで心配はない。

総帥:いや心配だよ!我々はプチトマトを大量輸入するために君を呼んだのではないんだ!

レイ:確かにそちらが心配する理由も分からなくない。
   今や我が国では年功序列が基盤化してしまい、政府の役人は年寄りばかりでトマトも中々育ちにくい。
   だが大丈夫だ、我らが国を代表するママさん集団「ガーネシアン・オバハンズ」の活躍によって、
   見る見るうちにトマトが急成長、繁殖しているのだ。
   我が国がトマトによって侵食されるのも時間の問題なのだ!

総帥:ある意味そっちのが問題でかいじゃないか!
   オバハンズの活躍でトマトがいっぱい収穫できると思いきや侵食、ってそこじゃなくてだ!

レイ:そこじゃない。確かにそこじゃないですよね、重要なのはお値段ですよねジャパネッタ高田純次郎さん。

総帥:誰だ!その適当そうなおっさんは誰だ!

レイ:今回このガーネシアン・オバハンズが真心込めて育てすぎたプチトマト、
   なんと6個入りパック100箱セットで4800ブルス!

総帥:まぁお得!これで我が国の食物も安泰、ってバカか!根本から違うわ!
   君、事の重大さが分かっとんのかね!国民の命がかかっているのだぞ!

レイ:まぁまぁ、そう熱くならず。
   交渉のマニュアルに「最初は何気ない日常会話から、ボケを交えつつ」って書いてあったんで。

総帥:私相手に交渉してどうするんだ!プチトマトとか日常すぎるだろ!
   そんな交渉で山賊を欺けると思っとるのかね!

レイ:…それはそうだが、しかし我がガーネシア公国は代々プチトマトを中心に文化が栄えてきたのだ。
   もはやプチトマト公国と言っても過言ではない。
   我が国のプチトマトに文句を言った事を謝罪して頂きたい。
   そもそも我が国のプチトマトは...

総帥:やかましいわ!プチトマトプチトマトやかましいわ!
   私はプチトマト文化を愚弄しているのではない、一刻も早く国民を救いたいのだ!

レイ:おっとそうでしたな、それではそろそろ仕事を行うとしますか。
   まず、その山賊のリーダーとやらの情報を頂けますかな?
   情報が皆無ではどうにもならない。

総帥:やっとやる気になってくれたか!うむ、それでは。
   山賊のリーダーは指名手配中である1億2900万の賞金首、「リベリオン・グスタフ」だ。
   数千もの山賊を率い、政府に反乱の意思を見せ付ける凶悪犯だ。とても放ってはおけん。

レイ:グスタフゥゥゥッッッーー!!!??

総帥:!?

レイ:グスタフ!いやぁ、懐かしい!何年ぶりだろうな!
   総帥さん、そのグスタフって昔の悪友ですよ!

総帥:はぁ!?

レイ:本当に懐かしいなグスタフ!スーさん、って呼んでたっけなぁ!

総帥:スーさん!?山賊のリーダーがスーさん!?

レイ:元々グスタフはガーネシア公国の出身でね、
   幼い頃会ってすぐに意気投合してそれ以来ずっと親友だったんですよ!
   でも別れてから他所の国でこんな事をやってたなんて、
   やはりあの事件が彼を変えたのか…

総帥:あの事件、だと…!?まさか、この襲撃の動機となるような事件があったのか!
   そのような原因があるなら、是非とも話して頂きたい。

レイ:その通りさ。話は遡るが、
   元々俺たち二人が仲良くなった頃にプチトマトの文明は始まっていった。

総帥:またプチトマトが絡んでくるのかよ!

レイ:ガーネシア公国にプチトマト文化が迷い込んだ当時、人々はそれを有毒植物ベラドンナと信じて疑わなかった。
   外観が似ていた為だ。此処ではプチトマトのことを「ベラドンナ」と呼ぶことにしよう。

総帥:確かに似てない事もないが…。

レイ:人々はそれを観賞用とし、誰一人として口にする者は居なかった。
   が、その概念を打ち砕き、貧しく飢えた末にベラドンナを口にした者が現れた。
   それこそが現在のガーネシア公国国王、クラウド・プチトマッティなのだ。

総帥:誰だよ!!そこは話の流れ的にグスタフじゃないの!?

レイ:グスタフはその頃、当時全世界に轟いてたゲーム、ボンバーマンに夢中だったのだ。

総帥:知らんよ!その話が本当にこの事件に繋がるのかね!?

レイ:続きを話そう。
   ベラドンナを国で初めて口にしたプチトマッティは物体に毒が無いことを証明し、
   全国民に、健全な食べ物であることを主張したのだ。
   国民達はそのベラドンナを恐る恐る口にし、実感したのだ。プチトマッティの言う事は正しかったと。

総帥:そこから皆が食べるようになっていったのか…

レイ:そう。そして当時の国王は彼に敬意を表し、そのベラドンナらしき食べ物に、
   彼の名前をもじって「プチトマト」と名づけた。最早それに誰一人逆らう者は居ないと思われていた。
   だがしかし、国民の中で一人だけそれに逆らった者がいた。
   それこそが現在のガーネシア公国参謀総長、ベンジャミン・ミニトマットンなのだ。

総帥:だから誰だよ!!そこはどう考えてもグスタフの流れだろ!!

レイ:グスタフはその頃、ボンバーマンをやりすぎて視力が下がったことにショックを受けていたのだ。

総帥:何やってんだよ!!

レイ:ミニトマットンは、そのプチトマトが口に合わなかったようなのだ。
   ミニトマットンは国を変える為、「反プチトマト連合」の旗を掲げ、国に猛抗議をした。

総帥:もうトマトが何なのか解んなくなってきた…

レイ:その行動に感銘を受けた国民は一人、また一人と連合に寝返り、
   やがて国は真っ二つに分裂され、「プチトマト美味しい派」と「美味しくない派」に分かれてしまった。
   国民たちは自分の意見を持つことの素晴らしさを痛感したのだ。

総帥:そんなとこで痛感すんなよ!

レイ:しかしだ!この国の現状を見て、国を元に戻そうと自ら中立を名乗って立ち上がった人物がいた。
   それこそが現在のガーネシア公国一等書記官、アーノルド・フルーツトマトンプソンなのだ。

総帥:だから何なんだよその次々沸いてくるトマト軍団は!!グスタフ出てこいよ!!

レイ:グスタフはその頃眼科で視力検査をしていたのだ。

総帥:もう勝手にしてろよ!!

レイ:トマトンプソンは互いに威嚇し合う国民の真ん中に立ち、
   「人間の感性なんて、人それぞれやん?」と言い放ったのだ。

総帥:プチトマトに哲学持ち込んじゃったじゃねぇか!

レイ:しかし自分勝手な国民たちはトマトンプソンの論に耳を傾ける事などなかった。
   特に反プチトマト連合の持論は激しく、あらゆる理由付けでトマトの不味さを主張した。
   「グルタミン酸の濃度が高すぎて美味しくない」
   「最近肌寒い日が続いてるから美味しくない」
   「女房に逃げられたから美味しくない」

総帥:本当にあらゆる理由付けだな!理不尽にも程があるだろ!

レイ:結局トマトンプソンの賛同者は現れず、分裂は深刻化する一方だった。

総帥:こんな国が連盟国だったとは…。

レイ:それから数日経ったある日だ。ゲームのやりすぎで眼科通いとなったグスタフだが、
   そこの眼科の先生が突然グスタフに愚痴を漏らしたのだ。
   「わい、プチトマトの仲介やってんねんけど、賛同者現れへんねん…」

総帥:トマトンプソン!眼科の医者だったのかよ!
   この際強烈な関西弁には触れないことにして、肝心のグスタフはどっち派だったのだ?

レイ:グスタフはそこで初めて国が抱えるプチトマトの問題を知ったのだ。

総帥:バカか!国を上げての対立に気付かないとかどんなだ!

レイ:グスタフはその頃ボンバーマンのゲーム開始直後に爆弾を置いて自爆してしまう癖を直すのに必死だったのだ。

総帥:必死すぎるだろ!!ちょっとは外の世界に目を向けろ!

レイ:双方の仲介を背負って立つフルーツトマトンプソンは、一人でも多くの中立者を見つけるため、
   プチトマトを食べたことが無いと言うグスタフにプチトマトを食べさせた。
   そう、初めてのプチトマトはプチトマトの味だったのだ。

総帥:「初めてのキスはレモンの味」みたいに言ってんじゃねぇよ!

レイ:しかしグスタフはプチトマトを好きになれなかったのだ。どうしても。
   そこからだ。
   現国王クラウド・プチトマッティと、彼の息子であるグスタフ・プチトマッティの間に壁が出来始めたのは。

総帥:予想だにしない所で話が繋がったな!プチトマッティの息子がグスタフだったのか!
   っていうかグスタフ名前可愛いな!

レイ:俺はプチトマトの味が好きだったため、グスタフとは折が合わなくなった。
   それまで仲が良かっただけに、辛かったものだ。
   俺が左と言えばグスタフは右、
   俺がメソポタミア文明と言えばグスタフはインダス文明。
   俺がアンジェリーナ・ジョリーと言えばグスタフは3匹の子ブタ。

総帥:どうやったら日常でそんな会話になるんだよ!!

レイ:俺がゴールキーパーをやりたいと言えば、グスタフは三塁のランナーコーチをやりたがる。

総帥:競技からして違うじゃねぇか!それはもはや仲違いの次元じゃないな…

レイ:反プチトマト連合は表でそうした地道な活動を続けていたのだ。
   相変わらずの理由付けも含めてな。
   「酸味が強すぎて美味しくない」
   「隣に座ったおっさんに携帯の液晶覗かれたから美味しくない」
   「ボンバーマン勝てへんから美味しくない」

総帥:最後グスタフじゃねぇか!!

レイ:しかしある日を境に、グスタフをはじめとする反プチトマト連合は姿を現さなくなった。

総帥:……何があったと言うのだ?

レイ:彼らは水面下で密かに計画を立てていたのだ。大きな計画をな。
   そしてそれはある日動き出した。リーダーであるベンジャミン・ミニトマットンが公国本部に、
   とある企画書を持ち込んだのだ。
   それこそがボンバーマンの爆弾をプチトマトに置き換えたゲーム、「ボンバートマトン」だったのだ。

総帥:はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

レイ:概要は当然、爆弾をトマトに置き換え、トマトが次々と爆発していく様を楽しむだけのゲームだ。

総帥:つまんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ

レイ:このゲームは反プチトマト連合軍の間で大好評、
   たちまち一世を風靡することとなった。
   グスタフですら、「これなら視力が下がってもいい!」「自爆万歳!」が口癖になったほどだ。

総帥:なんだこの低レベルな国…

レイ:しかし!当時の国王はプチトマト美味しい派の人間だった為、ゲームは廃盤、
   法律でゲームの使用を禁じてしまったのだ。

総帥:もっとマシな方向に権力行使しろよ!国王丸ごと馬鹿なのかよ!

レイ:これに腹を立てた連合の怒りはピークに達し、
   国内の作物を荒らしたり、と、大掛かりな襲撃をやり始めた。
   最早それが至極当然かのように、公国政府も黙認せざるを得なかったが、
   遂に連合のリーダーであるミニトマットンが、政府に直接要求をしてきたのである。
   「国民の命が惜しかったら、プチトマト美味しい派の政府の役人を全員島流しにしろ」とな。

総帥:…………あれ?そのセリフどっかで……

レイ:政府は連盟国である、当国セントブルスから交渉官を呼び、ミニトマットンと交渉。
   長期間に及んだが交渉は成立し、政府軍と連合軍は和解した。
   最後の最後まで関西弁で中立を貫いたトマトンプソンの協力もあって、
   国は一歩一歩和解の道を歩んで行ったのだ。
   だがしかし、そのような状況に置いても尚、反プチトマトの思想を貫いた男がいた。
   それこそが現在のガーネシア公国唯一のアナーキスト、クラウド・グスタフなのだ。

総帥:いやグスタフかよ!!…ん?いやいや、グスタフで正しいんだ。やっと来たグスタフ。

レイ:ガーネシア公国がプチトマトの国として、「ガーネシアン・オバハンズ」などの団体が出来る中、
   グスタフは一人だけ、ある二言を延々と呟いていた。
   「国を変えたセントブルスは絶対許さない」「俺もミニトマットンさんみたいになりたかった」
   そう呟いていた自らを裏切った一族「プチトマッティ」の名を捨て、
   「反旗」の意味を持つ「リベリオン」を掲げて国を去っていったのだ。
   
総帥:…………

レイ:…………な?

総帥:「な?」じゃねぇよ!!若き頃の目標全て今の状況じゃねぇか!!
   セントブルスが狙われてんのもリーダーがグスタフなのも、全部思いも寄らぬとばっちりじゃねぇか!!

レイ:馬鹿野郎!!何を寝ぼけた事言ってやがる!
   てめぇら政府側が国民の生活にもっと目を向けてりゃ、こんな事にならなかったんじゃねぇのか!
   最初の小さないざこざがあった時点でてめぇらが本当に国民の事を思ってんなら、
   わざわざ俺を呼ぶ事も無かったんじゃねぇのか!

総帥:………

レイ:政府ってのはどこの国でもそうだ、国民の事を第一に考えてると綺麗事を並べ立てて、
   実際は自分たちのことしか考えてないんじゃないか!
   こんな事も分からねぇで総帥の名を語るな!!

総帥:……!!

レイ:総帥とは何たるべきか、俺が1から教えてやる!
   まずどんな野菜も好き嫌いなく食べることが大事なのだ!

総帥:総帥の心得としてそれはどうかと思うが!!
   ………だが確かに、我々が間違っていた!もっと国民と一体化せねばならなかったのだ!
   我々はもっと国民一人ひとりの生活に関心を持っていればよかったのだ…!

レイ:分かったか!分かったら早速プチトマトの栽培を始めるのだ。

総帥:分かってないのお前の方じゃないのか!この期に及んでプチトマト文化に巻き込むなよ!

レイ:悪いが昔の友達の夢を掻き消すわけには行かないのでな。
   私はこれで帰らせてもらうとする。

総帥:えぇー!?いやちょっと!確かにこの状況作ったのは我々だけど!

レイ:我々だけど、何だ!?自国の問題は自国で解決する、これ政府の心得なり!!

総帥:プチトマトの反乱もまとめられなかった国のお前が言うのはどうだよ!!

レイ:そういうわけだ。どうしてもと言うなら、他国の外交官を呼んでくれたまえ。では失礼(バタン)

総帥:……うむ、いや確かに、他国の政府とその友人、彼に交渉をさせればグスタフ側に寝返る可能性もあり得る。
   仕方ない、他国の外交官を呼ぶしか手は無いか…。





- 1時間後 -





総帥:君がドラコニフ帝国より派遣された外交官か。

ドレーク:申し遅れました、私がその外交官、チャールズ・ドレークであります。
     本日は連盟国であるセントブルスの危機という事で、こうして此処に。

総帥:うむ、簡潔に話そう。ガーネシア公国出身のグスタフ・プチトマッティが、国民を人質に取っているのだ。
   それを君になんとかしてほしい。

ドレ:グスタフゥゥゥッッッーー!!!??懐かしい!!
   いやぁ、僕もガーネシア公国の生まれでね、あいつプチトマト大嫌いだったなぁ!
   そもそもガーネシア公国ってのはプチトマトの国と呼ばれるほどのプチトマト国でしてね!?

総帥:お前もか!!もういい帰れ!!!




月影連盟
第300回 461KB(1位)
コント/帝国直下 第十五狭閃師団の紛糾
名鑑の最後は青バト第300回の1位ネタ!

伝 令

「バ ー ナ ビ ー 将 軍 以 下
 第 十 五 狭 閃 師 団 中 佐 3 名 ヲ
 無 期 限 ノ 謹 慎 又 ハ 譴 責 ニ 処 ス 」







第二十一狭閃師団基地


軍曹「第十五狭閃師団と言えば、あの軍一屈強な…

少佐「そうだ、帝国随一を誇るバーナビー将軍の師団…
   まさかあそこの上層部が無期限謹慎とは、
   国は一体何を考えているのだ…」







第三十四狭閃師団基地


曹長「准将!大変なことに!」

准将「うむ、聞いた…まさかあいつらに限って…
   あそこの中佐は強固且つ優秀なメンバーが揃っている、
   まさか国を思う気持ちが裏目に出て謀反を招いたか、
   そうでなければ何だというのか想像も付かん……
   …国は今、どういう方向に向かっているのだ…」






第五狭閃師団基地


伍長「中尉、第十五狭閃師団とはどんな部隊なのですか?
   謹慎一つで此処まで国が揺れるとは、ただ事じゃないと…」

中尉「…まぁ知らないのも無理はない、
   あそこは戦地に置いても一切の油断と隙を見せず、
   おぞましいまでの信念と執念で名を轟かせたSクラスの隊だ。
   任務以外において一切その姿を見せず、
   常に基地内で謀略をめぐらせているとも言われている。
   そのために"覆面部隊"との別名を付けられ、
   国は勿論、近隣諸国からも脅威の部隊と見なされているのだ…」

伍長「…確かに、そんな隊が謹慎とあってはただ事じゃないですよね…」

中尉「あそこを束ねる指揮官バーナビー中将は別名"将軍"の名を持っており、
   巷では"アドルフ・ヒットラーの再来"とも言わてれる鬼兵だ。
   あの部隊をナチスに置き換えるなら、バーナビー中将がヒットラー、
   レイブン中佐がゲッベルス、ゴドノフ中佐がゲーリング、
   そしてシドニー中佐がシュペーアと言ったところだろう……」








1 日 前



第十五狭閃師団基地






将軍:…了解しました、大将殿。

大将:…頼むぞ、お前の部隊への信頼度は帝国一だ。
   Sクラスの任務とは言え、お前達なら軽くやってくれるだろう。
   帝国繁栄の為、その硬派な姿勢を貫いてくれたまえ。

将軍:心得ました、大将殿。我々に一任を。

大将:うむ、任せたぞ。今回の任務には大元帥殿も大変目を見張らせている。
   …それでは、休憩時を邪魔したな。失礼する。

将軍:はっ、御足労をかけてしまい申し訳御座いません。







(ガチャ)







レイブン中佐:…………帰ったようです。

    将軍:…………ああああーーーーーーぁぁぁぁっっっ、だりぃぃぃぃぃぃい!!!!
       眠ぃぃぃぃいいいい!!!腰痛ぇぇぇぇぇええええ!!!

シドニー中佐:…しょ、将軍っ!そんな大きい声出すと聞こえちゃいますよ!ひぃぃぃっ!!

    将軍:あぁん?今なんて言った?

シドニー中佐:ひぃぃぃっ!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

    将軍:かったるいじゃん!任務とかさぁ!
       他の部隊のやつらに任せればいいのに、毎回俺らのとこ持って来るし…
       先月買い占めた大量のプリンも冷蔵庫から消えてるし、
       オマケにワイドショー見ながら食べようと思って置いてた煎餅も跡形ないし…テンション下がるわー…
       ……で、今回の指令は何なのよレイブンちゃん?

レイブン中佐:人をちゃん付けで呼ばないでください。ぶち殺しますよ。
       えーっと今回の任務は、近隣の国"ドラコニフ帝国"の"バスクード准将"の暗殺ですね。
       いつも通りの他愛もない仕事かと。

    将軍:い、今一瞬信じられない言葉が聞こえたけど…。
       まぁいいや、それより任務まで暇だなぁ。
       ゴドノフ早く帰ってこないかなぁ。



(ガチャ)




ゴドノフ中佐:ただいま帰りました!将軍殿!

    将軍:おぉっ!帰ったか!「噂をすれば箱の中身はなんじゃろな」ってやつだな!

レイブン中佐:全然違いますよ将軍。部屋の隅っこの方で爆発してください。
       それよりゴドノフ、例の件どうだった?

ゴド:…うん、やっぱりしくじったらしいよ。
   それどころか、一人も殺れなかったらしい。
   参謀力の強い第六狭閃師団だからある程度の期待はしたけど、
   全くダメな計画だったみたいだね。
   これじゃ帝国が衰退するのも無理ないよ。

レイ:なるほど、まぁ大方予想通りだな。
   これで第六狭閃師団の評判はガタガタになったわけだ、
   やつら、ヤケになって何をしてくるか分からない。注意しないとな。
   この件、将軍はどうお考えになります?

将軍:難しい話はやめて七並べしようよ。

ゴド:いや真面目に聞けよ!!

レイ:将軍、蜂の巣になりたいんですか?

ゴド:こらレイブン!!お前将軍殿に向かってなんて口の聞き方を!!

シド:そ、そうだよレイ!いくら頭が悪いからって、将軍殿は敬わないと!

ゴド:お前が一番キツイな!!

将軍:もういいよ!俺のハートは既にボロボロだから許して!
   …まぁ結局、俺たちの部隊以外は無能だってことなんだよ。
   第六狭閃師団も、その程度だったってことさ。
   俺たち4人を筆頭に、優秀な兵が役一万人、
   我らが第十五狭閃師団は向かうとこ敵なしだからね。だれが頭悪いじゃ!!

シド:ひぃぃぃっ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

ゴド:…あ、それでは、そろそろ時間なので私とシドニーは夜警に出ます。
   レイブン、将軍の面倒頼んだよ。

レイ:分かった。ビシビシにしごいておく。

将軍:なんでそうなるの!?

シド:じゃぁ、行ってきます。ひぃぃぃっ!!




(ガチャ)




レイ:行っちゃいましたね、将軍。…将軍?

将軍:なぁ、レイブン。俺は考えてるんだ。この師団の行く末について。

レイ:将軍がえらく真面目だ。明日には帝国が滅びているだろう。

将軍:俺の影響力どんだけだよ!たまには俺だって悩む事もあるよ!
   …で、行く末だよ。この師団の。
   "覆面部隊"なんて名前付けられて恐れられてるけど、
   本当に他の師団や国からも一目置かれているかが凄く気になるんだ!

レイ:まぁ確かに、悩むところではありますね。
   でも明日には帝国は滅びるからいいんじゃないですか?

将軍:どれだけ俺が不真面目じゃなきゃいけないの!?
   …やっぱり師団の長たる者、統率する団の将来を見据えるのも必要不可欠だと思うからね。

レイ:どこかの指揮官ブログからの引用ですか?

将軍:俺はちょっと難しい単語を使う権利さえないのかよ!
   …とにかく!その為に色々な作戦を考えてみたんだよ!聞いてくれる?

レイ:将軍が1年分買い置きしてたプリン、
   我々が全部食べたこと許してくれるなら聞きましょう。

将軍:……あれやっぱりお前らかよ!!どっさり置いてたのに1日で全部無くなってたの!!

レイ:前回の任務の後は師団の全員でプリンパーティでした。
   将軍、スヤスヤ寝てたでしょ?

将軍:確かに!前の任務の後はやたら眠くなって寝てたけど!
   …もういいよプリンは。また買えばいいし。

レイ:さすが心が広いですね。作戦、聞いてあげましょう。

将軍:めっちゃ上から目線…。俺より階級4つ下なのに…。
   まぁいいや、その作戦っていうのは、
   師団の中の誰かを、他の師団にスパイとして送り込む事なんだ。
   で、そのスパイに、第十五狭閃師団の噂話とかをそれとなく聞いてもらう。
   本当に俺たちが脅威の部隊と見なされているのか、
   本当の顔が知られていないかを確認するためにね。
   噂通りならそのままでいいし、
   もし間違った情報が流れてるなら訂正をしてもらう。どうだろう!?

レイ:難しい話はやめてばば抜きしましょうよ。

将軍:復讐!すごい露骨に復讐!心に突き刺さった!

レイ:私の気持ちが分かってもらえればそれでいいんですよ。
   で、スパイですか。もし失敗すれば謹慎も免れない事態ですが、
   まぁその時は将軍一人の首で耐えてもらいましょうか。
   作戦の詳細をお願いします。

将軍:話をスイスイ進めんといて!俺が一人で責任負うパターンで進めんといて!

レイ:師団の長たる者、やはりそこは1万人分の責任を負って颯爽と去らないと。

将軍:荷が重過ぎるよ!いくら上官でも限度ってあるでしょうが!
   責任云々の話は置いといて、とりあえず詳細を聞いて欲しいんだ。

レイ:前回のプリンパーティの前に将軍が飲んだオレンジジュース、
   我々が睡眠薬を混ぜたことを許してくれるなら聞きましょう。

将軍:あれもお前らかよ!!本当に異常なほど眠くなったの!!

レイ:任務を終えてお疲れであろう将軍への我々の精一杯の配慮ですよ。

将軍:「プリンパーティしたいから邪魔者は消そうという我々の策略」にしか聞こえないよ!!
   確かに、あの時のレイブンのオレンジジュースの勧め方は異常だったもんな!
   …もういいよ、あの時はオレンジジュースの海で泳ぐ夢見て楽しかったから。

レイ:さすがですね将軍。作戦の詳細、聞いてあげましょう。

将軍:相変わらず上から目線…。俺より生命線短いのに…。
   …よし、話すよ。詳細だけど、
   師団のメンバーから、優秀な兵を一人出す。
   その兵に、今回任務失敗で評価の下がってる第六狭閃師団に、"転属"という名目で入ってもらう。
   勿論、前にいた師団がここだとは言わずにね。
   後は、さっき言った通りだ。
   で、今回スパイとして送り込む兵は、ロネガン少尉がいいかなと思ってるんだけど、
   どうだろう!?
   
レイ:難しい話はやめて大富豪しましょうよ。

将軍:やっぱりかよ!!ちょっと「来るかなー」思てたけども!!
   いざ来るとやっぱりグサッときたよ!!

レイ:「男なら三倍返し」って言うじゃないですか、あれです。

将軍:もう1回来るの!?なんか生きるのが嫌になってきたなぁ…

レイ:確かに作戦としては有用とは思います。私もこの師団の評判は気になってたので。
   しかし少々口を出しますが、本当にロネガンでいいのでしょうか?

将軍:ロネガンと言えば、将校以上の任務を一人でやってのけるツワモノだよ!
   最近入ったばかりだけど、変人揃いのこの師団の中で、唯一まともな人材だよ。不満なの?

レイ:私は別に構いませんが、将軍に睡眠薬を飲ませる計画を持ち出したのは彼です。

将軍:もう嫌だ!!怖い!!どこで誰が何を企んでるか分かったものじゃない!!
   もしや、プリンパーティを計画したのもロネガンとか…?

レイ:パーティの言い出しっぺはゴドノフとシドニーです。

将軍:孤立無援とはこの事かよ!!
   もう、他師団よりこの師団にスパイ送ったほうがいいんじゃないかな…
   …あ、でもひょっとすると、レイブンは意外と今回の計画には加担してないとか!?

レイ:私は毒も混ぜようって言ったんですが、さすがに止められました。

将軍:やっぱり一番酷かったよ!ちょっと無謀な期待を抱いたけど!
   …はぁ…俺ってやっぱ部下に信用されてないのかな……

レイ:まぁでも、そんなに気落ちする事は無いですよ。
   将軍だって、さすがに任務で怪我をした場合は師団の皆が心配してくれる筈です。

将軍:ほんと!?そうかなぁ、やっぱり心配されると嬉しいなぁ。

レイ:本当ですよ。例えば、将軍が鋭利な刃物で心臓を一突きにされて死んだとするじゃないですか。

将軍:死んじゃったじゃん!俺、天に召されちゃったじゃん!
   その後心配されようが煮ようが焼かれようが一緒じゃん!

レイ:話は最後まで聞いてください。脳みそとカニミソ入れ替えますよ。
   で、死んだ将軍を前にして、兵士たちは皆、焼香を将軍にぶっ掛けて燃やすわけです。

将軍:何その超お手軽お葬式!!人権が無さすぎじゃない!?

レイ:それで兵士たちは心配になるんです。灰になった将軍は、燃えるゴミか燃えないゴミか。

将軍:どっちでもいいよ!そんなとこ心配すんな!むしろ既に燃え尽きてるよ!
   もう、そんなことされるなら脳にカニミソ沸く方がマシだよ…
   でもこんなに信頼されてなかったなんて、ショックだなぁ…。
   ………いや、待てよ、だからこそ俺が考えた作戦で、兵士たちの信頼を取り戻すチャンスじゃないか。
   今回の作戦を成功させて、おぉ将軍には参謀の能力もあったのか、という意識を埋め込める。
   オマケにこの師団の評判も調べられて、一石二鳥じゃん!
   レイブン、なんだか俺勇気がわいて来たよ!!

レイ:難しい話はやめて神経衰弱しませんか?

将軍:すごい唐突に来た!!俺、もう立ち直れそうもない!!本当に神経が衰弱してきたよ!!
   もう、レイブン怖い。1年に1回あったクレヨンしんちゃんのホラーくらい怖い。





(ガチャ)





ゴド:ただいま戻りました!将軍殿!

レイ:お疲れ様。将軍なら脳にカニミソ湧いて死んだよ。

ゴド:脳にカニミソが!?何その状況!?

将軍:待て待てこらレイブンこら!勝手に人を殺すな!

シド:なんだ、今夜はカニパーティかと期待したのに…

ゴド:こらシドニー!!

レイ:ひぃぃぃっ!!!

将軍:お前らな…。まぁいいや、ところでゴドノフにシドニー、
   俺たちさっきまで、俺が考えた新しい作戦の話してたんだけど、
   二人はどんな話してた?
   よければ内容を聞いて、日常的な話とかも作戦に加えたいんだけど…

ゴド:はっ!将軍殿!我々は、その、次回の任務について話しておりました!

シド:…その通りであります!ひぃぃぃっ!!

将軍:なるほど!さすが二人は違うなぁ、レイブンとは大違いだよ。

レイ:タンスの尖ったところ向けて突進しますよ。

将軍:ごめんなさい…。もう言いません…。
   …とにかく、今日は遅いしもう寝よう。話はまた明日聞かせてよ。

ゴド:承知しました!









15 分 前








レイ:分かった。ビシビシにしごいておく。

将軍:なんでそうなるの!?

シド:じゃぁ、行ってきます。ひぃぃぃっ!!





(ガチャ)





ゴド:…煎餅パーティ?

シド:そう、煎餅パーティ。もう盗んであるんだ。

ゴド:シドニー!お前ってやつは!

シド:ひぃぃぃっ!!でも将軍が師団の納金を勝手に使ってる事は、
   ロネガン少尉の調べで分かってるからね。僕らにも楽しむ権利はあるよ!

ゴド:まぁ確かにそうだけど!しかし、新入りのロネガン少尉ってのは凄いやつだなぁ。
   とにかく、今回はどうやって将軍を退席させるんだい?

シド:ロネガンから、計画書を貰ってるよ。彼は作戦参謀の能力もあるからね。
   えーとまず『次回の任務の際に、後方射撃に見せかけて将軍を木っ端微塵に』

ゴド:酷すぎない!?さすがに殺すのはダメでしょ!!

シド:ロネガンってのは過激だからなぁ。前回のプリンパーティの睡眠薬計画も彼だったしね。
   他にも『将軍が寝付いたところに上からパイプオルガンを落として木っ端微塵に』
   『お宝が埋まってるのかと思って掘り返したら実は地雷で木っ端微塵に』
   『ボンバーマンの要領で壁際に追い詰めてでかい爆弾を置いて木っ端微塵に』

ゴド:木っ端微塵率100%かよ!!一生分の木っ端微塵を聞いた気がするよ!!

シド:ロネガンは将軍を殺すことしか頭にないね。ひぃぃぃっ!!
   でも将軍が死んだら、僕ら3人のうちから誰かが昇格するね。

ゴド:こらシドニー!!お前やっぱりきついな!

シド:冗談だよ。ひぃぃぃっ!!とにかく、ロネガンの計画は置いといて、
   僕らだけで作戦を立てよう。

ゴド:将軍が木っ端微塵になるバッドエンドが脳裏に焼きついてるけど、頑張ってみるよ。

シド:まず、さっき届いてた指令だよね。どっかの帝国のおっさんを暗殺するっていう。
   あの任務の後にしようか。将軍をどうやってあの場から退けるかだ。

ゴド:前回はレイブンが「ほら将軍、オレンジジュースを入れてあげましたよ。
   え?私がジュースを入れるのが怪しい?やかましいですよ。ほら、飲んでください。
   オラ、早く。将軍宅の庭の木全部灰にしますよ」って無理やり飲ませてたけど、あの手段はもう使えないね。

シド:そうだね…じゃぁ、物理的な強行作戦で行こうか、
   将軍が寝てるベッドの下から大量のオレンジジュースを噴射したり

ゴド:なんでそういう発想に至ったの!?
   もうちょっと現実味あるのでいこうよ!

シド:じゃぁ、下から五寸釘を打ち込んだり?

ゴド:どこの13日の金曜日だよ!程度の加減へたくそか!

シド:あ、分かった。将軍が戦車に乗ってる背後から首目掛けて五寸釘を

ゴド:だからどこのデッドコースターだよ!真夏のホラー映画特集か!

シド:うーん、じゃぁどこに五寸釘を打ちこもうかなぁ…

ゴド:五寸釘シリーズはもういいよ!それより、もうちょっと痛くない方向性でいこうよ。
   さっきから木っ端微塵になるか五寸釘刺されるかの究極の二択しか発言してないよ。

シド:ひぃぃぃっ!!あぁ、もう、何をどう考えても
   「将軍をトンネルに置き去りにする」以外の考えが浮かばないよ。

ゴド:だからその突飛な発想力!着いていくのがやっとだよ!

シド:分かってないなぁゴドノフは。例えば、合コンの帰りに女を持ち帰ったけど、
   凄い我がままな性格があらわになって夜道に置き去りにするってのはとても有効な手段なんだよ。

ゴド:それは合コンの帰りに女が我がままな性格だった場合の話だろ!
   将軍はただのおっさんだよ!

シド:その置き去り戦法にプラスして、常に暗いトンネルだよ。トンネル。
   なんだこれは、もはや芸術か。

ゴド:知らねぇよ!あと置き去り戦法ってなんだよ!
   どこの先人たちのイデオロギーだよ!

シド:ひぃぃぃっ!!でも「芸術は木っ端微塵だ!」って言うでしょ?

ゴド:言わねぇよ!「芸術は爆発だ」じゃねぇか!
   木っ端微塵だと大分儚い気がするよ!

シド:あ、分かったぞ!トンネルに置き去りにされて右往左往してる将軍が、
   壁にもたれかかった瞬間に五寸釘を打ち込むっていうのはどうだ!

ゴド:結局そこに回帰すんのかよ!その自身はどこから湧いて出てくるんだよ!

シド:でも、将軍もあぁ見えて強いからなぁ。
   トンネルに置き去りにされても自力で生還するかもしれないし、
   五寸釘を返り討ちにするかもしれないな。

ゴド:だからその不安もどこから湧いて出てきたんだよ!!

シド:でもこれで「五寸釘は木っ端微塵だ!」が完成したわけだ。

ゴド:お前はどこを目指してるんだよ!!何を完成させようとしてるわけだよ!!

シド:ひぃぃぃっ!!夜のテンションでおかしくなってた!
   僕ら一体何を目指してたんだっけ?

ゴド:…えーと、ほら!そうだよ、どうやったら将軍を木っ端微塵にできるかっていう。
   なんで最終的に五寸釘が木っ端微塵になってるんだよ。

シド:ひぃぃぃっ!!違うよゴドノフ!煎餅パーティの話だよ!

ゴド:…あぁそうだ!俺もおかしくなってた!ダメだこりゃ!

シド:…って言ってる間にもう基地に着いたよ!ひぃぃぃっ!
   続きは明日だね……




(ガチャ)




ゴド:ただいま戻りました!将軍殿!―――――――――――










(暗転)






   "将軍が1年分買い置きしてたプリン、
    我々が全部食べたこと許してくれるなら聞きましょう。"

   "……あれやっぱりお前らかよ!!どっさり置いてたのに1日で全部無くなってたの!!"

   "前回の任務の後は師団の全員でプリンパーティでした。
    将軍、スヤスヤ寝てたでしょ?"

   "確かに!前の任務の後はやたら眠くなって寝てたけど!
    …もういいよプリンは。また買えばいいし。"


 大将:…これが、基地内に仕掛けた盗聴器の録音内容です。
    そしてこっちが……



   "そう、煎餅パーティ。もう盗んであるんだ。"

   "シドニー!お前ってやつは!"

   "ひぃぃぃっ!!でも将軍が師団の納金を勝手に使ってる事は、
    ロネガン少尉の調べで分かってるからね。僕らにも楽しむ権利はあるよ!"

   "まぁ確かにそうだけど!しかし、新入りのロネガン少尉ってのは凄いやつだなぁ。
    とにかく、今回はどうやって将軍を退席させるんだい?"



 大将:夜警に出た二人に仕掛けた盗聴器の録音内容です…。

大元帥:にわかに信じ難い話だ…まさかあの師団が…

 大将:この処理、どうされます?

大元帥:不本意だが仕方がない。これだけの本性と醜態を見せられたのではな。
    …第十五師団の四名には謹慎処分の旨をまとめた伝令を出しておけ。

    …正直、お前がここまで暴いてくれるとは思ってもいなかったよ。
    これで、第六師団の名誉も挽回したといったところか。
    長期間のスパイ活動、ご苦労だった。
    明日から休暇を認める。その後は今まで通り、第六狭閃師団のメンバーとして活動を続けるのだ。









ロネガン少尉:……了解しました。













伝 令

「バ ー ナ ビ ー 将 軍 以 下
 第 十 五 狭 閃 師 団 中 佐 3 名 ヲ
 無 期 限 ノ 謹 慎 又 ハ 譴 責 ニ 処 ス 」









将軍:ねぇねぇ、見てみて、なんか出た。なんか出たよ。
   漢字がいっぱいで読めないんだ、要約してくれない、レイブンちゃん?

レイ:人をちゃん付けで呼ばないでください。ケツの穴に手榴弾詰め込みますよ。
   まぁ、簡単にまとめると、我々は暫くの間、軍に居られないってことですね。
   恐らく、何らかの方法で昨夜の会話がばれてしまったということでしょう。
   仕方ないですね。秘密はいつかばれるものです。
   難しい話はやめてポーカーやりましょうか。

将軍:先に言われた!!くそう!!くそう!!

ゴド:全く、基地でどんなことやってたんだよ!!

レイ:それはお前ら二人も一緒だよ。謹慎は四人全員だからな。

将軍:そうだそうだ!!ゴドノフにシドニー、お前ら本当はどんなこと話してたんだ!!
   知ってるんだぞ!俺が寝てる間にプリンパーティやって、
   しかもそれを計画したのもお前らなんだってな!!

シド:ひぃぃぃっ!!ばれてる!!

レイ:俺が話した。ついでに煎餅パーティも開こうとしてたこと話してやれよ。

ゴド:こらレイブン!!いくら謹慎だからって開き直りはどうかと思うぞ!!
   煎餅パーティはまだ実行されてないからバレてなかったのに!!

シド:そ、そうだよレイ!いくら頭の悪い将軍でも、
   無くなった煎餅が元に戻っていれば何事も無かったんだと思うはずだよ!

ゴド:やっぱりお前酷いな!!

将軍:もううるさいわ!!やめて!!プリンも煎餅も許すから俺のために争わないで!!
   …はぁ。第六師団にスパイするつもりが逆にやられてて、
   評判もがた落ちで任務も出来ないなんて最低だよ…。
   でもまぁ、いいよ。お前らと居ると楽しかったし。何回も死にかけたけど。
   謹慎がとかれたら、今度は覆面部隊じゃなくて、お笑い部隊としてやればいいじゃん!
   そうだよみんな、なんだか勇気が湧いてきt

レイ:難しい話はやめてトランプタワー作りましょう。

将軍:せめて最後まで喋らせて!!俺の一番の見せ場奪わんといて!!
   …もう思いっきり疲れたよ。家帰って休も。じゃぁなお前ら、元気で。誰が頭の悪い将軍じゃ!!

シド:ひぃぃぃっ!!!時間差で来た!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい